2023年度の賃上げ予定企業 76.0%「賃上げしない」理由 「価格転嫁できていない」が最多~2023年度香川県「賃上げに関するアンケート」調査~

東京商工リサーチ

Research

2023.04.06

賃上げ率「5%以上」は2割未満
「定期昇給」が最多

2023年度の春闘で、賃上げを実施予定の企業は76.0%であることがわかった。規模別では、実施企業は大企業が100.0%に対し、中小企業は74.5%で、25.5ポイントの差がついた。

賃上げを「実施しない」理由は、「十分に価格転嫁できていない」が最多で、以下、「原材料価格が高騰しているため」、「燃料代が高騰しているため」、「電気代が高騰しているため」、「受注の先行きに不安があるため」等の理由が挙げられた。急激な物価上昇を転嫁できない企業ほど、賃上げに後ろ向きな姿勢にならざるを得ない状況が浮かび上がる。

「賃上げ率」では、連合が23年度春闘で掲げる「5%以上」の目標を予定する企業は17.9%にとどまり、2割に届かなかった。

賃上げの内訳は、「定期昇給」と「ベースアップ」が多かった。一方、インフレ手当の支給では、中小企業の方が積極的である事がわかった。

人手不足や物価高への対応で賃上げが注目されているが、中小企業にとって賃金体系の底上げは資金負担が大きく、一時金やインフレ手当などの名目で対応している状況が透けて見える。

コロナ禍や物価高、エネルギー価格上昇など、企業を取り巻く環境は予断を許さないが、業績と賃上げのバランスに苦慮する中小企業は多いようだ。

一方、非正規従業員への賃上げ実施率は63.2%にとどまり、正社員の実施率を12.8ポイント下回っている。21年4月からパートタイム・有期雇用労働法の改正法が中小企業にも適用され、賃上げも「同一労働同一賃金ガイドライン」に基づいた対応が求められている。

賃上げに必要な要因では、多くの企業が「値上げ」を挙げた。賃上げ原資のための価格転嫁の必要性を訴える企業にとっては、今後、価格転嫁や受注拡大に加え、効率化や採算性向上への支援もキーワードになるだろう。

Q.最近の急激な物価上昇に伴い、従業員に「インフレ手当」(類するものを含む)を支給しましたか?(択一回答)

「インフレ手当」を「支給した」は11.8%(51社中、6社)、「支給する予定」は2.0%(1社)、「検討中」は25.5%(13社)だった。一方、「支給しない」は60.8%(31社)で、6割以上を占めた。

規模別では、「支給した」は大企業ではなかったが、中小企業は12.2%(49社中、6社)あった。また、「支給しない」大企業は100.0%で、中小企業は59.2%(29社)だった。

Q.賃上げを実施するうえで必要なことは次のうちどれですか?(複数回答)

最多は、「製品・サービス単価の値上げ」の44社。以下、「製品・サービスの受注拡大」の31社、「従業員教育による生産性向上」と「補助・助成制度の拡充」が17社、「設備投資による生産性向上」と「仕入・外注単価の低減」の13社と続いた。
※本調査は2023年2月1日~8日にインターネットによるアンケート調査を実施。有効回答57社を集計、分析した。
※賃上げの実態を把握するため、「定期昇給」、「ベースアップ」、「賞与(一時金)」、「新卒者の初任給の増額」、「再雇用者の賃金の増額」を賃上げと定義した。
※資本金1億円以上を「大企業」、1億円未満(個人企業等を含む)を「中小企業」と定義した。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 有馬 知樹

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