結果ではなく過程を大切に

NPO法人 アーキペラゴ芸術士事務局 マネージャー 太田 絵美子さん

Interview

2014.12.18

芸術士として活躍する村井知之さん、太田絵美子さん、三好智子さん(左から)

芸術士として活躍する村井知之さん、太田絵美子さん、三好智子さん(左から)

アーキペラゴとは、「群島」や「多島海」を意味する英語。NPO法人アーキペラゴは、瀬戸内の歴史や文化を未来につなげていくことを目的に、設立された。「交流」「創造」「発信」などのカテゴリーで、ビーチコーミングや情報発信サイトの運営といったさまざまなプロジェクトを行っている。

取り組みの一つが、高松市の事業でもある「芸術士活動」だ。市内の保育所や幼稚園などの施設に週1回アーティストを派遣し、子どもたちと創作活動を行うもので、2009年に始まった。芸術士は現在17人。絵画やファッションなど専門は多彩。シンガーソングライターもいる。
芸術士であり事務局のマネージャーでもある太田絵美子さん(31)は、「作品を完成させることが目的ではありません。結果ではなく過程を大切にしています」と話す。

芸術士が指示して子どもに何かを作らせるのではない。子どもが作りたいもの、してみたいことができるようにサポートし、見守る。子どもの創造力を引き出すことが芸術士の仕事だ。それゆえ、施設によっても芸術士によっても活動内容が異なる。

太田さんは東京や千葉で教員をしていたが、芸術士活動に参加するため地元である香川に帰って来た。

「雑木林を使って、空間のデコレーションや秘密基地づくりをしました。アーティストの一番の理解者は、子どもかもしれません」。芸術士と子どもたちが響き合う。そんな感覚だという。「活動を通して、子どもたちの視野や選択肢が広がってくれたら」

村井知之さん(40)は、芸術士活動の立ち上げから参加。「大人はよく見せようとしますが、子どもはしたいことに向かって突き進みます。アートとの化学反応が面白いですね。親戚のおじさんみたいに思ってくれたらうれしい」。音楽に合わせて自由に踊るなどのパフォーマンスを、子どもと共に楽しんでいる。

三好智子さん(31)はイラストが専門。「芸術士とアートについて語り合う子もいますよ。子どもの創造力は、私の想像以上です」。夏は、凍らせた絵の具を使って指で絵を描いたそう。

芸術士は子どもたちとの活動を写真で記録していく。その「ドキュメント」と呼ばれる活動記録には、あっと驚くような創作活動の様子と、満面の笑みを浮かべた子どもたちの姿がある。毎年、活動記録展を開催しており、今年は高松市丸亀町で12月19日から始まる。

「1施設に1芸術士。芸術士という存在が当たり前のものになり、高松市以外にも広がっていけばうれしいですね」と太田さん。芸術士の皆さんと話していると、自分の頭の固さに気付く。「こうあるべきだ」という固定観念や、何かをするときには必ず結果や成果物が必要だという考えにとらわれていたのだろう。

サイズの決まったキャンパスに、きちんと収まるようお行儀よく絵を描くことだけが正解ではない。いつの間にか固くなった頭を解きほぐしてくれる。芸術士は、子どもだけでなく大人にとっても、大切で必要な存在になっていくように思えた。

太田 絵美子 | おおた えみこ

1983年7月5日 香川県高松市生まれ
2006年3月 武蔵野美術大学 卒業
2010年4月 NPO法人アーキペラゴ入社
      芸術士活動に参加
写真
太田 絵美子 | おおた えみこ

NPO法人 アーキペラゴ芸術士事務局

所在地
香川県高松市番町1丁目5-1
TEL
070-5351-7708
事業の概要
保育所・幼稚園・こども園への芸術士派遣
URL
http://geijyutsushi.archipelago.or.jp
確認日
2018.01.04

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