早春布

香川県教育委員会教育長 工代 祐司

column

2018.03.15

卒業式の季節。先週から今週にかけて8つの特別支援学校の卒業式が行われました。丸亀養護学校では13日に行われ、学舎を巣立つ高等部の22名に卒業証書が授与されました。

2月末、丸亀養護学校3年生の英樹さんと京奈さんの訪問を受けました。卒業記念に織り上げた“さをり織り”のテーブルランナーを持ってきてくれたのです。

黒色、水色、灰色、金色の縦糸に、群青、薄緑、萌黄色の横糸が柔らかく交差し、小さなスパンコールがきらりと輝きます。早春の讃岐路の里山や里海が心に浮かぶ美しい色調の織布です。織物班の9人の生徒たちがリレーで織り上げた世界で一つの作品。
特別支援学校の高等部では、各教科の学習の他、作業学習に重きを置いています。卒業後、生活力を高めて自立し社会に参加していける力を養成することは大きな教育目的です。生徒たちは3年間、清掃や園芸、木工、窯業、縫工、織物等の各班に分かれ複数の作業を学習し、その中で、自分の役割に責任を持つことや集中力を養っていくのです。

4月から英樹さんは就労継続支援事業所に就職が決まり、京奈さんは生活介護事業所で軽作業に従事します。二人とも実にいい笑顔で3年間の頑張りが伝わってきました。

この春、県内の高等部卒業者は144名。うち就職が3割、施設入所・通所等で仕事に従事する者が6割強。自立と社会参加を目指した努力は今後も続きます。

色も太さも素材も異なる何百何千の糸が一枚の美しい布に織り上がるように、私たち一人一人が互いに思いやり、共に生きていければいいなあと思いました。

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

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香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

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