融資を通して“日本の家”が 進化するのがおもしろい

住宅金融支援機構 四国支店長 松村 収さん

Interview

2018.08.16

大学時代は、当時まだ多くなかった、名称に「環境」が入った学科で、都市計画から建築物の設計、熱工学、リサイクルなど幅広く学んだ。研究室の仲間は設計事務所、ゼネコンなどに就職した人も多かったが、公共性の高い仕事がしたかったことや先輩の誘いもあり、住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)に入庫した。

最初に携わったのは、公庫の融資基準を満たしているかどうかを、図面を見てチェックする仕事。柱の太さや断熱材の施工など、建築基準法より少し高い基準を設けてクリアした住宅に融資する。融資することで、性能のいい住宅が全国で何十万戸という規模で増えていく。「うちの会社の影響もあって日本の住宅全体が底上げされる。それが、社会を変えることにつながっていると思うとおもしろかったですね」

時代の変化を間近で

今でも印象に残っている仕事が2つある。1つは、数年に1度の大きな融資制度改正に携わったこと。「住宅の質に応じて高性能の住宅にローンの金利引き下げ」をする制度導入のため、当時の大蔵省に説明する資料作成のための膨大な作業をした。金利を引き下げたら性能がいい住宅はどれぐらい増えるのか、財源はどの程度必要になるか・・・市場や業界の実態を調査し、数多くのシミュレーションを行った。「私は先輩たちの元で仕事をしただけですが、導入が決まったときは『ここから何かが変わるんだ』と感慨深かった。そういう場面に立ち会えたことはすごくいい経験でした」

2つめは、初めて管理職になり、出向先で住宅の瑕疵(かし)保険(※)の業務を行ったこと。在籍中の2005年に、マンションの耐震偽装問題が起こった。これをきっかけに、当時は任意だった瑕疵保険等を法律で義務化することになり、国が行う法律制定作業に関わることとなった。「あの時は本当に忙しくて寿命が縮まる思いでした」。ただ、その時一緒に苦労したメンバーとは、いまでも年1回程度飲み会を開いている。「大変でしたが、いい仲間ができました」

単線ではなく複線で

趣味のヨガを実践中

趣味のヨガを実践中

忙しかった出向時代を経て、息抜きも兼ねてヨガを始めた。「平日は仕事やお付き合いで忙しくても、土曜午前中のヨガで、もやもやが晴れます」。古い建築が好きで、昔の宿場町や温泉に出かけることも多い。四国にいるうちに八十八カ所を巡ろうと計画している。「今の仕事を一生懸命頑張ることはもちろん大切ですが、趣味でも社会活動でも仕事以外のことにも目を向けた方がいいと思います。“単線”じゃなく“複線”。その方がネットワークも広がりますから」

大変な仕事を経験した中で思うのは、目の前のことだけにとらわれないこと。例えば、省エネ住宅1000戸つくるという目標に対し、数字に一喜一憂するのではなく「日本の省エネルギー性能を上げる」というふうに捉える。すると視野が広がり、目標達成に向けて息の長い取り組みができるという。「先輩に教えられた考え方です。志を高く持てば壁にぶつかっても気持ちを切り替えて乗り越えられる、そう思えるようになったことで今の私があります」 (石川 恭子)
観光列車「はやとの風」で鹿児島へ

観光列車「はやとの風」で鹿児島へ

※住宅に雨漏りなどの欠陥があった場合に、その補修費用を補償する保険で、住宅事業者が加入する。

松村 収 | まつむら おさむ

1965年 大阪府生まれ
1984年 兵庫県立長田高校 卒業
1989年 大阪大学工学部環境工学科 卒業
    住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構) 入庫
2008年 業務推進部営業推進室推進役
2010年 近畿支店営業推進第一グループ長
2014年 CS推進部住宅技術情報室長(併任)
    技術情報グループ長
2015年 審査部住宅審査室長
2017年 CS推進部長
2018年 四国支店長

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