
担当する防災・危機管理コースでは、新入生27人と教員との絆づくりを目的に小豆島で合宿研修を実施。「小豆島はなぜオリーブの島になったのか?」をテーマに、1976年の台風17号で甚大な被害を受けた小豆島町の谷尻地区と西村地区を見学しました(創造工学部のHP「ニュース・学生活動」ページ参照)。
西村地区は日本におけるオリーブ栽培発祥の地ですが、約40年前には今年の7月豪雨災害による土石流被災地と同じように、土石と流木が広がった荒地になっていました。その後、土石流跡地はオリーブ公園として整備され、多くの観光客が訪れています。かつて、ここで甚大な土石流災害があったと気づく人はどれだけいるでしょうか?
西村地区では、花崗岩が風化してできたマサ土からなる斜面と、マサ土(ど)が崩壊して土石流となり、その土石流の砂礫(れき)(※)が堆積してできた緩斜面にオリーブが植栽されています。土砂災害によってできた水はけの良い砂礫質の土が、オリーブの栽培に適していたのです。小豆島のオリーブは、土砂災害の跡地であることを逆手にとって生み出された名産品なのです。
実は、私たちが暮らしている土地は、傾斜地なら土砂災害で、平地・低地なら洪水によってできています。つまり、私たちは土砂災害、もしくは洪水の跡地に暮らしています。しかし、多くの人はそのことを認識していないため、被害に遭うと「長年暮らしているが、このような災害に襲われると思わなかった」と話をされます。自分たちが、災害の跡地に暮らしていることを意識していないため、災害の危険性を図示したハザードマップや行政から提供される防災気象情報、避難情報も、他人事のように感じるのではないでしょうか?
自分の住んでいる土地の成り立ちを知ることは、災害対策の基本です。同時に、地域の弱みを逆手に取り、強みとして生かす発想の源なのです。
(※)砂や細かい石
香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一
- 写真
おすすめ記事
-
2024.06.20
災害に強いインフラ整備は四国島を救う
-
2025.06.19
備讃瀬戸と讃岐平野の造形美
香川大学特任教授・讃岐ジオパーク構想推進準備委員会委員長 長谷川修一
-
2025.02.20
サヌカイト・レクチャー&コンサート
香川大学特任教授・讃岐ジオパーク構想推進準備委員会委員長 長谷川修一
-
2024.10.17
防災×観光は郷土愛とレジリエンスを育む
香川大学特任教授・讃岐ジオパーク構想推進準備委員会委員長 長谷川修一
-
2024.02.15
ジオグルメによる香川県の魅力発信
香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構 長谷川修一
-
2023.10.19
香川の石の産業と文化を継承する高校の専門コースを!
香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構 長谷川修一
-
2023.06.15
香川大学「高校生のためのジオアートJr.マイスター養成講座」
香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構 長谷川修一
-
2023.02.16
ジオツーリズムによる地域活性化
香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構 長谷川修一
-
2022.10.20
「ジオツーリズム・エキスパート養成講座」ジオツアー発表会
香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構 長谷川修一
-
2022.06.16
香川大学ジオツーリズム・エキスパート養成講座
香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構 長谷川 修一
-
2020.12.03
現場に出かけ、五感を使って観察し、考える
香川大学創造工学部教授 長谷川修一
関連タグ
最新紙面情報
Vol.412 2025年08月21日号
「ここに来て良かった」 生徒一人一人に寄り添って
学校法人村上学園 理事長 村上学園高等学校 校長 村上 太さん
モニタリングの知見を生かし 地域と「顔の見える対話」を
日本銀行 高松支店長 稲村 保成さん
諸機関と柔軟に連携し 四国の中小企業に寄り添う
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 四国本部長 田中 学さん
まち全体を一つの「宿」に見立て 古民家を核に日常風景の魅力を発信
NIO YOSUGA 代表取締役 竹内 哲也さん/菅組 社長 菅 徹夫さん
生徒の「やってみたい」が地域とつながる 進化するボランティア団体「TSUNAGU」
大手前丸亀中学・高等学校