笑顔を生み出す 日本一のトンカツ工場へ

サヌキ畜産フーズ 社長 増田 浩さん

Interview

2018.10.18

冷凍トンカツの製造ライン=三豊市詫間町詫間の本社工場

冷凍トンカツの製造ライン=三豊市詫間町詫間の本社工場

“本物”を実感するために

「日本一のトンカツ工場」を目指す会社が三豊市にある。冷凍トンカツを加工・製造するサヌキ畜産フーズだ。
特化した設備と直輸入 多種多様な要望に応える

特化した設備と直輸入
多種多様な要望に応える

一つの工場当たりでつくる冷凍トンカツの生産量は現在全国で3本の指に入る月間512トン。トップを走る大手食品メーカーは700トンで、社長の増田浩さん(46)は「近い将来、新工場をつくる構想もあり、射程圏内」と自信を見せる。しかし、決して「生産量日本一」が最終目標ではない。

掲げる事業ビジョンは“笑顔創造業”。「本物のおいしさで、人々の笑顔を創造する」という意味を込め、その実現のために必要なのが「日本一」だと増田さんは言い切る。

素材や調理法にコストをかければ、おいしくできて当たり前。それを高額で売るのは目指す姿ではない。「肉を柔らかく食べやすく、お客さんのニーズに合わせて加工し、できるだけ安く提供する。それが本物のおいしさだと思っています」

仕入れる豚肉はヨーロッパやメキシコなど、自ら産地まで出向いて品定めする。「直接やり取りする方が、肉の太さや脂のつき具合など、こちらの要望が伝わりやすい。生産者とうまくやっていけるかどうかも重要な判断基準になる。商社を介さず直輸入することでコストも抑えら、貿易の仕組みも学べました」
ローストンカツ、ヒレカツ、野菜巻きカツなど多種多様なカツ類

ローストンカツ、ヒレカツ、野菜巻きカツなど多種多様なカツ類

詫間町の加工工場では、トンカツの形、重量、味付けやパン粉の食感など「卸先の要望に合わせて200品目以上、多種多様な対応が可能。豚肉に特化した工場設備なので、取引先のリクエスト通りの商品が一両日中には形にできる。それが我が社の一番の強みだと思う」

サヌキ畜産フーズがつくるトンカツは9割以上は、製造を発注した相手先のブランド名で販売されるOEM製造で、スーパーやレストラン、弁当店などに卸される。「食べている人は『サヌキ畜産フーズのトンカツ』とは分からない。その状況の中で、我が社のトンカツが本物だと実感するには、『日本で一番多く食べられているトンカツの工場にならないといけない』と思った。『日本一』は従業員にとってもやりがいや誇りに繋がります」
パン粉をつける工程

パン粉をつける工程

尊敬する先代の父は4年前に亡くなった。笑顔が印象的な人だった。「怒っているのを見たことがない。『ほうか、ほうか』『よっしゃ、よっしゃ』と、苦しい時でもいつもにこやかに笑っていた。そんな父の姿から『笑顔をつくり出す会社を目指そう』と心に決めました」

本物のトンカツで、一人でも多くの人を笑顔にしたい。亡き父を思いながら、増田さんは「日本一」への決意を語る。

衝撃受けた父のトンカツ

サヌキ畜産フーズのルーツは、祖父が高瀬町で始めた養豚業。自宅に隣接して豚舎があり、「高校時代は豚のいびきを聞きながら試験勉強をしていました」と増田さんは笑顔で話す。「臭いもあったと思うが全然嫌じゃなかった。家を空けられず、家族旅行もできなかったが、それが普通だと思って育ちました」

父の代で養豚業に加え、食肉加工業に進出、トンカツ製造に乗り出した。「ある日、父が『新しいのができたんや』とうれしそうにトンカツを持ち帰った。とても美味しくて『これをうちがつくっているのか』と衝撃を受けたことを覚えています」

大学を卒業後、食品メーカーで3年ほど修行をしたのち、1998年、26歳の時に家業に入った。高瀬町で祖父の養豚業を継いだ4つ下の弟・孝さんと協力し、オリジナルブランド「讃玄豚」を使った新商品を開発するなど、兄弟で支え合いながら、祖父と父が遺した畜産の道を歩む。

「食」に携わる責任

2010年に社長になり、「5S活動」を始めた。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字をとった職場環境を改善するための取り組みで、例えば「整理」とは、要るものと要らないものを区別して、要らないものは捨ててしまう。「整頓」とは、必要なものを必要な時に効率よく取り出せる状態にすること。

「社内の整然とした見た目以上に、従業員の意識が大きく変わりました。様々な場面で責任感が芽生え、大幅に無駄も減りました」。さらに相乗効果もあったという。「『これだけきちんとした会社なら間違いはないだろう』と、取引先との信頼関係にも繋がっていると思います」。業績が上向いている要因の一つかもしれないと増田さんは話す。

社長就任10年目にあたる2020年に創業40年を迎える。「トンカツに続く第2の柱に位置付ける総菜事業を強化したいし、OEMだけでなくPB(プライベート・ブランド)商品にも挑戦していきたい」と意気込む。

過去には、仕事がうまくいかなかったり、自信を失うこともあった。そんな時は、「豚舎にエサをやりにいっていました。おいしそうに食べている豚を見ると心が癒やされました」

同時に感じるのは「食」に携わる責任だという。「豚はどのように生まれ育ち、どう出荷されていくのか。その生態や命の尊さを知らないと、本当の日本一にはなれないと思う。『ただトンカツをつくっているだけじゃない』と従業員にも伝えながら、おいしいトンカツを追求していきたいと思っています」

篠原正樹

増田 浩 | ますだ ひろし

1972年 三豊市高瀬町生まれ
1991年 高瀬高校 卒業
1995年 松山大学経済学部 卒業
    日本食研株式会社 入社
1998年 現サヌキ畜産フーズ 入社
2007年 専務取締役
2010年 代表取締役

サヌキ畜産フーズ株式会社

住所
香川県三豊市詫間町詫間2112番地140
代表電話番号
0875-83-6262
設立
1980年
社員数
165人
事業内容
冷凍トンカツ等の食肉製品加工、製造販売他
沿革
1980年10月 中小企業等協同組合として認可、組合員5企業で設立。出資金7500万円
1981年 5月 創業
1982年 6月 新たに3組合員が加入。
増資後、出資金9000万円に
1992年 4月 ミートピアサヌキがオープン
2000年11月 観音寺工場落成
2007年 7月 観音寺工場を惣菜・介護食製造工場にリニューアル
2008年 3月 本社工場ISO22000(HACCPシステム含)対応工場へリニューアル
地図
URL
http://www.meatpia-sanuki.com/
確認日
2018.10.18

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