キョーワの代表取締役・加地正人さんは、3年前に伊吹島を訪れた時に食べた、ゆでたてのカタクチイワシのおいしさに衝撃を受けた。島外に流通しているのは、塩ゆでした後に乾燥させた煮干しの「伊吹いりこ」だけ。ゆでたての「釜揚げ」は、島でだけ味わえる知る人ぞ知るグルメだった。
伊吹島では漁場と加工場が近いため、カタクチイワシを漁獲から30分以内に塩ゆでできる。鮮度がいいままゆでるため、味もいいという。「おいしいのになぜ冷凍しないんだろうと思いました」と加地さん。カタクチイワシの漁は6~8月限定だが、冷凍食品にすれば年中、とれたてのおいしさを味わえる。
2016年、加地さんは伊吹漁業協同組合と協力して、試作を始めた。1年目は冷凍庫の温度が思うように下がらず、うまくいかなかった。翌年、マイナス30度を保てる冷凍庫で再挑戦すると、急速冷凍でゆでたての味を保つことができた。
17年は11トン、18年は16トン生産。香川県内の小・中学校で給食に使ってもらうなど、テスト販売をした。小中学生3700人を対象としたアンケートでは、6割が「釜揚げいりこをまた食べたい」と答えた。「伊吹島を知らなかったり、いりこを食べたことがなかったりする子どもにも食べてもらえるのはうれしいですね」。19年は50トンの生産を目指す。
本格的な販売開始となるが、「うちだけで儲けようとは思っていません。釜揚げいりこが『今治タオル』のように、地域のブランドになれば。そのまま焼いて食べてもおいしいけれど、各社が釜揚げいりこを使ったオリジナル商品を販売することを期待しています。ゆくゆくは海外市場も狙いたい」
【問い合わせ】株式会社キョーワ
三豊市豊中町岡本1207
TEL:0875-56-6700
おすすめ記事
-
2022.09.15
思いや価値観を尊重することで 人と組織がともに成長する
松
-
2013.05.02
魚のうま味引き出す海の恵みを使った逸品
詫間水産 代表取締役 金子 明憲さん
-
2008.10.02
御用聞きでマーケットをつかむ
白洋舎 代表取締役 鵜川 俊英さん
-
2018.12.06
職人であり経営者
パティスリーブラン 代表 田中 寿典さん
-
2015.08.06
お金との付き合い方
メロディ・インターナショナル CEO 尾形 優子
-
2018.06.21
あれも欲しいこれも欲しい もっと欲しいもっともっと欲しい
四国なんでも88箇所 巡礼推進協議会会長 佐藤 哲也
-
2024.08.01
「ものづくりが好き」が拓いたエキスパートへの道
造田拓也(ぞうた・たくや)さん/株式会社三祥 製造一課第2グループリーダー
-
2024.07.04
和田邦坊の遊び心が息づくデザインを復刻
復刻版おとぼけ人形/株式会社tao.
-
2024.06.20
見て・学んで・試せるFA技術の複合施設
SHIKOKU ROBOTICS/四国三菱電機販売株式会社
-
2024.06.06
医師が監修する訪問型パーソナルトレーニング
メディカルフィットネスPONO/株式会社happipon
-
2024.03.07
リアルな「今」の言葉で味わう万葉の世界
令和言葉・奈良弁で訳した万葉集シリーズ/株式会社万葉社