魚のうま味引き出す海の恵みを使った逸品

詫間水産 代表取締役 金子 明憲さん

Interview

2013.05.02

干物

魚の干物製造を中心に行ってきた詫間水産。創業から25年目に、父から会社を受け継いだ金子明憲さん(48)は、現代人の「魚離れ」に頭を悩ませていました。

「おいしい干物を食べてほしい」。その一心で商品開発を重ね、誕生したのが「魚屋さんのうまいっ白だし」です。一見、干物とは関係のないように思える白だしが、詫間水産の干物作りに大きな変化をもたらしました。

「先代のころは魚の漁獲量と消費が多く、干物の売れ行きも順調でした」。製造方法は今とは異なり、「灰干乾燥」をしていた。塩水に漬けた魚を布などで包み、火山灰の上に並べ、灰に魚の水分を吸わせる方法だ。これには大変な手間とコストがかかった。「まず、魚離れといわれる時代に合った商品を提供しなければと考えました。『高付加価値干物』を作ろうと、何百も試作しましたね」。効率を考えて、機械乾燥を取り入れた。乾燥方法ではなく、味にこだわったもの作りへとシフトした。
 

瀬戸内海の魚は脂肪分が少なく、生食や煮つけには最適だが、干物には向かないそう。16%程度の脂肪がなければ、乾燥させたときに身がパサパサになる。詫間水産では北海道や三陸、九州産の脂の乗った魚を使う。社内で徹底しているのは、自分が買いたいと思うものを作ること。「これぐらいでいいか」という妥協は許さない。

何とかしておいしい干物を作れないかと考えていたとき、ヒントになったのは燧灘で取れるカタクチイワシの煮干し「いりこ」だった。いりこを買うと、ときどき小さなイカやエビが交ざっていることがあった。「あの小さなイカがおいしいのは、いりこと一緒に蒸し上げるからだろうと思いました。そうだとすれば、いりこだしに漬けた干物も絶対においしいはずだと考えました」。新しい干物作りのスタートを切った。

まずは、詫間水産オリジナルのだし作りを始めた。いりこはえらや内臓を丁寧に取り除き焙煎してから、だしを取る。試行錯誤の結果、昨年9月に「魚屋さんのうまいっ白だし」が完成した。早速、10月に開催された三豊市の食のイベント「みとよマルシェ」に出品。来場者によるお気に入り投票で、840票のうち262票を獲得し、第1位に輝いた。

白だしはそのまま調味料として使える。魚の煮付け、カルパッチョのソース、野菜の浅漬けなど用途はアイデア次第。薄めてうどんのつゆに、こしょうを利かせればラーメンのスープにもなる。
もちろん干物も忘れてはならない。「いりこだしに漬けた干物は、全国的にみても珍しいのでは」。塩漬けに加えて、白だしに漬けたイカ、カマス、ホッケなどを売り出し中だ。中でも金子さんのお薦めはつぼ鯛。水分が抜けて引き締まり、脂が乗った肉厚の身とパリッと焼いた香ばしい皮。焦がさないよう火加減に注意して焼く。おいしく食べるコツはこれだけだ。
これまではスーパーマーケットへの販売やインターネット販売のみだった。客の要望に応える形で、今年、工場に直売所を併設し販売を始めた。干物や白だしのほかにも、瀬戸内海の塩と香川本鷹を使ったドレッシングが並ぶ。
「今後は県内企業と共同で商品開発をしてみたいですね。お好み焼きや焼きそばなどに白だしを使って、
『讃岐風』にするのも面白そう。家庭で、飲食店でどんどん使ってほしい」。海の恵みとうま味がたっぷり詰まった新しい店は、多くの人でにぎわいそうだ。

金子 明憲 | かねこ あきのり

有限会社 詫間水産

住所
香川県三豊市仁尾町仁尾辛43-15
代表電話番号
087-582-3999
地図
確認日
2013.05.02

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