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ヒットメーカーが誘(いざな)
「トンカツ日本一」への道

四国日清食品 社長 山田 孝和さん

Interview

2019.02.21

トンカツ、シュウマイ、お好み焼きなど四国日清食品が取り扱う様々な冷凍食品=三豊市詫間町

トンカツ、シュウマイ、お好み焼きなど四国日清食品が取り扱う様々な冷凍食品=三豊市詫間町

“たまごポケット”でブレーク

マーケティング力を強化 潜在ニーズを掘り起こす

マーケティング力を強化
潜在ニーズを掘り起こす

NHKの朝の連続テレビ小説「まんぷく」では、先週ついに即席ラーメンが完成したが、それを一歩先に進めたのが山田孝和さん(61)だ。1958年生まれのロングセラー商品、日清食品の「チキンラーメン」に2003年、小さなくぼみ“たまごポケット”ができた。割ったたまごがのせやすくなり、チキンラーメンは再ブレーク。過去最高の590万ケースの売上を記録した。この“たまごポケット”の生みの親が、当時日清食品でマーケティングを担当していた山田さんだ。「麺の上にたまごがうまくのらないというお客さんの声がもとになりました。チキンラーメンとたまごはとても相性が良く、お客さんに喜んでもらえてうれしかったですね」

手掛けたヒット商品は数多い。「日清のどん兵衛天ぷらそば」は2008年にカップ麺特有の波打った縮れ麺からストレート麺にリニューアル。「ぴんそば」と名付けられ、「麺が真っすぐなのでほぐれやすい」「お店と同じようにすすって食べられる」と好評で、こちらも当時過去最高の売上を記録した。「市場動向を分析し、細やかなアイデアで切り込んでいく。商品開発から製造、販売までの責任を背負うのがマーケッターの仕事です」

ラーメン店やうどん店を毎週のように食べ歩き、おいしい店があるという噂を聞けばすぐに駆けつけた。「お店がなぜ繁盛しているのか、そこには必ず何らかの原因があります」

マーケティングのプロフェッショナルだった山田さんに転機が訪れたのは一昨年3月。トンカツを主力とした業務用冷凍食品の製造・販売を行うグループ会社「四国日清食品」の社長に抜擢された。「まさか私が社長になるとは思ってもみませんでした」

サラリーマンから経営者になり間もなく2年。「最初は不安も戸惑いもあったが、今は毎日がとても楽しい」と目を輝かせる。「お客さんはどんな不便を感じ、何を望んでいるのか。マーケティング力をもっと強化し、潜在ニーズを掘り起こしたいと思っています」

トンカツを丸から四角に

看板商品の「四角いシリーズ」。 (左から)メンチカツ、ロースカツ、ビーフカツ

看板商品の「四角いシリーズ」。
(左から)メンチカツ、ロースカツ、ビーフカツ

三豊市詫間町から全国発信する四国日清食品。1970年に創業し、日清食品グループで唯一、レストランやスーパーなど業者向けの冷凍食品を専門に扱う。全国シェアは第2位で、山田さんは「日本一」を目標に掲げる。「『四国日清のトンカツじゃなきゃダメだ』と言ってもらえる信頼を得ること、それが真の日本一の姿だと思っています」

売り出し中なのがカツサンドの「四角いシリーズ」。楕円形のイメージが強いトンカツを、サンドイッチ用の食パンにぴったり合うよう四角にプレスしたアイデア商品だ。第一弾のロースカツが人気となり、第二弾は黒毛和牛入りメンチカツ、第三弾では牛ハラミを使ったビーフカツがラインナップに加わった。「パンからはみ出したカツをカットする手間が省け、ロスもなくなったと好評です。サンドイッチの端の方をかじっても食パンだけで『あれ?カツがない・・・・・・』ということもありません」
トンカツを箱詰めする作業員=本社工場

トンカツを箱詰めする作業員=本社工場

シュウマイ、うどん、そば、お好み焼など扱う食品は幅広い。カボチャの黄色、枝豆の緑、タケノコのピンク・・・・・・四季折々の食材を練り込んだ弁当向けの「彩りしゅうまいシリーズ」は、鮮やかな色合いで食欲をそそる。

「ここ数年、冷凍食品業界は活況です。冷凍技術の進歩に加え、レストランなどの卸し先では人手不足で調理や加工まで手が回らないところも多い。品質は手づくりと変わらず、さらに付加価値の高い商品を提供する。それが私たちの使命です」

目指すゴールは同じ

「牧場を経営し、広大な土地でのどかに暮らすのが夢だった。でも、さすがに無理でした」と笑う。大学では農学部で畜産を学び、大学院まで進んだ。

新卒で入った日清食品ではマーケティングや食品開発部門の他、7年間のロシア勤務も経験した。「まだカップ麺文化がないところに日本の技術を持っていきました。マイナス42℃という極寒の日もありましたが、ロシアの人がおいしそうにカップ麺を食べているのを見た時、どこへ行っても人間は変わらないなあと思いました」

日清食品時代は、不特定多数の個人消費者に向けた商品をつくった。「絶対的なおいしさをベースに、常に“最大公約数”を探っていました」。だが、四国日清で求められるのは、取引業者の要望や用途に合わせたピンポイントの商品づくりだ。「B to C(Business to Consumer・企業と消費者の取引)から、B to B(Business to Business・企業間取引)へと環境はがらりと変わった。でも、『ユーザーに喜んでもらう』という目指すゴールは全く同じです」

もう一つ、以前と異なる点があるという。「肉という生きた食材を相手にするところです。厚みや柔らかさは日によって変わる。部位によって味も違う。均一な商品をつくり続けるのは難しいが、そこが面白いところでもあります」。今後は医療や介護現場向けの商品づくり、さらには海外も視野に入れたいと意気込む。

「B to Cの市場に比べ、この業界は工夫する余地がまだたくさんある。新しいことにどんどんチャレンジしていきたいですね」

篠原 正樹

山田 孝和 | やまだ たかかず

略歴
1958年 兵庫県尼崎市出身
1976年 西宮市立西宮東高校 卒業
1982年 新潟大学大学院農学研究科 修了
     日清食品 入社
     食品開発部、マーケティング部、日清食品ホールディングス・モスクワ駐在員事務所などを経て
2017年 四国日清食品 代表取締役社長

四国日清食品株式会社

住所
香川県三豊市詫間町詫間2112-59
代表電話番号
0875-83-3311
設立
1970年2月5日
社員数
245人
事業内容
トンカツ、シュウマイ等調理冷凍食品の製造・販売
うどん、そば等冷凍麺類の製造・販売
資本金
9800万円
地図
URL
http://www.nissinreitou.co.jp/
確認日
2019.02.21

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