
手前の装置が成分分析カメラ
光の波長から対象物の成分を特定する「成分分析カメラ」を使う。凍結防止剤や海水などによって塩害が引き起こされ、コンクリートは劣化する。道路や橋をカメラで見ることで、塩害の原因となる塩化物や水分を測定し、残りの寿命も予測する。
類似の技術は、コンクリートの一部をサンプルとして採取しなければならなかったり、構造物の一部分しか検査できなかったりというデメリットがある。西藤さんが使うのは、香川大学の国際特許技術を用いた成分分析カメラだ。検査対象物を傷つけずに、広い範囲の検査ができる。
「これまで実証実験を重ね、検査サービスの需要はあると見込んでいます。インフラの老朽化が進んでいく中で、生活の安全・安心を守っていけたら。香川大学発の技術で社会に貢献できたらうれしい」

成分分析カメラは性能によって70万円、
1500万円、3000万円の販売価格を想定。
手のひらに載る大きさのものもある
香川大学に進学し、石丸伊知郎教授の研究室で成分分析カメラの研究・開発に携わった。従来のカメラは、1㍍四方の大きさで、室内に設置して使う。石丸研究室では、屋外で測定ができるように小型・軽量化を進めていた。
2015年、石丸研究室はドローンの活用を推進する「瀬戸内かもめプロジェクト」の実証実験に参加。西藤さんは小型のカメラを試作し、ドローンに載せて上空から測定できるかを試した。
同プロジェクトで出会った、㈱空撮技研の合田豊さんや㈱かもめやの小野正人さんからは刺激を受けた。「床に部品を広げて、ああでもない、こうでもないと言いながら装置を作りました。こういう仕事ができたらと思うようになりましたね」。在学中にドローン同好会を立ち上げ、仲間と一緒に作った装置をドローンに搭載し、温度や光の明るさなどの計測も行った。
卒業後は空撮技研に入社。ドローンと成分分析カメラを使った農地の栄養価測定を福島県に提案し、採用された。1年間プロジェクトリーダーを務めた後、職員として香川大学に戻った。

屋外でのコンクリート検査の様子
起業後は、まず分析サービスを提供する予定だ。製造を進めながら、コンクリート構造物だけでなく、土壌や海洋などの環境調査や医療の分野でも成分分析カメラを役立てたいと考えている。「すぐにたくさん作って販売できるものではないので、苦しい期間は長いと思います。経営者として学ばなければならないこともたくさんある。でも、初めてのことに挑戦するのは楽しみですね」
鎌田 佳子
西藤 翼 | さいとう つばさ
- 略歴
- 1992年 兵庫県姫路市生まれ
2011年 兵庫県立姫路飾西高校 卒業
2015年 香川大学工学部 卒業
2017年 香川大学工学研究科 卒業
株式会社空撮技研 入社
2018年 香川大学医学部 医用化学技術補佐員 入職
2019年 「かがわビジネスモデル・
チャレンジコンペ2018」最優秀賞受賞
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