桃の節句を控えたこの季節に旬を迎える野菜が「ワケギ」です。本格的な春が近づくと、冬野菜の多くが花をつけ始めます。その中でワケギは、花をつけず、この季節に特においしさを増していきます。七十二候の「魚上氷(うおこおりをいずる 2月14日ごろ)」を過ぎて、店頭をにぎわすアサリやマテガイなどの早春の魚介類とともに、桃の節句に欠かすことのできない郷土料理である「ワケギ和え」として調理されます。
このワケギ和えになくてはならないもう一つの食材が「白みそ」です。白みそは、その年に収穫された新米をふんだんに使って秋の終わりに仕込み、正月の雑煮から使われ始めます。白みそは塩分濃度が低いので、他のみそと比べて貯蔵が難しい季節限定の調味料でした。白みそを腐らせないため、徐々に塩を加えながら、可能な限り長持ちさせたと伝わります。
白みそを使った郷土料理は、ワケギ和えに始まり、てっぱい(フナなどの酢みそ和え)、チシャもみ(レタスの酢みそ和え)、タケノコの木の芽和え、そして初夏の鰆のみそ漬けと、桃の節句をはさんだ季節に集中していることがわかります。早春にいただく白みそを使った郷土料理のラインナップは、季節の食材を構成要素として旬の料理が構築される、典型的な事例と言えましょう。
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん
- 写真
おすすめ記事
-
2023.08.03
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑰
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.07.06
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑯
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.06.01
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑮
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.05.04
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑭
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.04.06
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑬
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.03.02
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑫
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.02.02
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑪
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.01.05
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑩
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2022.12.01
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑨
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2022.11.03
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑧
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2022.10.06
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑦
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸