ものづくりの原点 見つめて立ち返る

清水建設 執行役員 四国支店長 岡本 正さん

Interview

2012.06.21

清水建設が四国に〝上陸〟したのは1914年(大正3年)、高松の名建築「披雲閣」を建設したときだ。以来、建設大手の雄として香川県はもちろん四国の建築・土木産業を支えてきており、再来年、100周年を迎える。経済の流れが一変し、業界に新しい潮流が押し寄せる。四国支店も例外ではない。

ものづくり委員会に注力

元請けの建設会社が陥りがちな一種の手配師で満足するのではなく、「ものづくりの原点にかえり、数字や書類のうえで土木建築物を把握するのではなく、皮膚感覚で品質管理できるゼネコンになろう」と取り組むのが支店の中に設けた「ものづくり委員会」と名付けた勉強会だ。その先頭に立つ。

約180人の支店従業員のうち技術系のほぼ全員が所属し、技術と技量を研さんする。委員会は座学が中心だが、しばしば外に出る。四国にいたら、経験できない超高層の建物、東京や大阪など大都会の地下の建設現場に足を運び見学し、工事現場トップの工事長らの説明を聞く。

最新技術も歴史的工事も学ぶ

これまでに訪れた現場は関西の美術館、東京・東銀座で工事中の新しい歌舞伎座建設の現場、いずれは来ると予想される南海大地震に備えて今年3月に完成したばかりの高知県庁の免震工事など。高知県庁の工事は免震レトロフィットと呼ばれ、今の建物そのままで人の引っ越しを伴わないで工事を進める特殊な現場だった。

大都会で繰り広げられる最新の技術、工法を見にいくだけではない。四国なら例えば、平安時代に空海が指導して造営された満濃池など歴史的な土木の現場にも足を運ぶ。現地で実際に見ると、新しい発見があり、古い工事技術に学ぶことも少なくない。

ガラパゴス化ふせぐ意味

「いろんな現場に連れていくのは若い技術者を狭い範囲でしか『ものづくり』を考えられない、いわゆるガラパゴス化するのを防ぐため」と。建造物は、出来上がったときの達成感、後世に残るものをつくるという誇りが働く楽しさ、喜びになる。「やった人間じゃないと分からないうれしさがあります」

高松には、建設大手5社、準大手各社が四国支店や高松支店を置き、競争する。どの会社も大なり小なり若手エンジニアに建築、土木の技術の核心を伝えていくことに熱心に取り組む。これも競争。受注競争だけでは生き残れない。

自身は全国に15人いる支店長のうち3人しかいない土木畑の出身。東京や横浜で巨大都市インフラを建設する土木工事にかかわってきた。「地面の下何十メートルという地下工事の進め方を若い人たちに伝えたい」

岡本 正 | おかもと ただし

略歴
1977年 3月 早稲田大学理工学部土木工学科 卒業
1977年 4月 清水建設 入社
1992年 2月 横浜支店工事長
2001年 11月 土木東京支店統括工事長
2004年 4月 九州支店土木部長
2007年 4月 北陸支店副支店長
2010年 4月 四国支店長
2011年 4月 執行役員 四国支店長

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