失敗も糧にして “世の中にないもの”をつくる

オリエンタルモーター株式会社 高松カンパニー 執行役員社長 寒川好紹さん

Interview

2021.03.04

学生時代に機械工学を学び、「これから発展していく分野だ」と考え精密電機メーカーを志した。入社したオリエンタルモーターは、医療機器や産業機器などに使われる精密小型モーターを開発・製造している。本社は東京で営業所は全国にあるが、開発・製造機能を持つ事業所は西日本では高松だけ。「創業者が偶然立ち寄った時に、海の近くで景色が美しいところを気に入り、1969年に亀水町に事業所をつくったと聞いています」

当時、近隣に取引企業はなく、関東方面から部品を集め、つくった製品も関東方面に運んでいたため効率的とはいえない、人材もなかなか集まらないなど苦労も多かった。「それでも、先輩たちが知恵を出しながらなんとか生き残ろうとやってきたから今がある。その思いを受け継ぎたい」

「経験すること」は強い

ものづくり技能の鍛錬と伝承(亀水時代)

ものづくり技能の鍛錬と伝承(亀水時代)

地元・香川での就職を希望していたが、入社後は技術職として関東勤務となった。先輩のもと製品開発などにも携わる中で、1年ほど営業技術として経験を積んだことが仕事への思いを変えるきっかけとなった。

「営業先として訪れた工場で、本当にいろんな種類の機械や設備を見ました。それで、製品を生み出す設備そのものをつくりたい、という思いがふつふつとわいてきたんです」。上司に工場の設備を設計・製造する「生産技術」部門にいきたいと直訴。熱意が通じて、念願の仕事に取り組むことになった。

生産技術は、開発された製品をどうすれば時間やコストの無駄なく大量生産できるか考え、それを実現できるよう工場の設備をつくる仕事。「市販の設備を使用することもありますが、“うちにしかつくれない製品”を世に出すにはやはり製品に合わせた設備を自社でつくるしかありません」

アイデアを出し、構想がまとまってもうまく形にできないこともある。時には3~4年かかることもあった。「本を読んでわかったつもりになるより、何度も失敗と成功を経験して学ぶ方が絶対に強い。失敗を糧に“世の中にないもの”を生み出すのはおもしろいし、ものづくりの醍醐味だと思います」

主役は「人」

社内の交流行事

社内の交流行事

10年以上勤務して関東の生活になじんだころ、故郷・香川に異動となった。2001年に高松香西事業所が操業した後は、亀水町でのものづくりを2012年に竣工した高松国分寺事業所へ移設し、工場の設備設計などにも携わった。

「設備の仕事をしていると主役は“設備”という気になりますが、ものづくりの中心はやはり“人”だと思います」。だからこそ、高松カンパニーの社長として人材育成にも力を入れている。「女性活躍」への取り組みも進め、グループリーダーとなる女性も増えている。

「事業所メンバーには、自分で考えて行動しよう、と話をしています。その上で、全員が活躍できる場をつくることが私の仕事です」

現在、高松カンパニーでは、医療機器など精密な動きが必要とされる「ステッピングモーター」を主に製造している。「今後、必要とされる商品はますます複雑になっていく。難しい分野ですが、全員で挑戦したい。新しい価値をもつモーターを生み出したいですね」

寒川 好紹 | さんがわ よしつぐ

略歴
1964年 長尾町生まれ
1985年 高松工業高等専門学校(現・香川高等専門学校) 卒業
    オリエンタルモーター入社
    技術研究所 品質保証部
1989年 技術研究所 生産技術部
1998年 高松事業所 生産技術課
2005年 相馬事業所 モーター製造部次長
2007年 高松事業所 製造技術部長
2008年 高松事業所 製造部長
2014年 高松国分寺事業所 所長
2017年 高松カンパニー 執行役員社長

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