「いちゃりばちょーでー」“出逢い”で人生が変わった

アサヒビール 四国統括本部 本部長 板倉 茂樹さん

Interview

2012.03.15

教えてもらった「楽しむ」こと

「人生が変わりましたね」。とても楽しそうに語り始めた。「それまでは、ほぼ会社中心の毎日だったんですが、仕事、趣味、家族…。『それぞれを楽しむ』ということを教えてもらいましたね」。一体何があったのかを尋ねると、身を乗り出しながら逆にこう問いかけられた。

「沖縄に行ったことはありますか?」

一緒に飲み、語り合う

2005年春、業務提携しているオリオンビール株式会社へ出向した。生まれて初めての沖縄だった。「気候風土になじめるのか、人間関係はどうか、とても不安だったんですが、すごく『受け入れてくれる』んですよ」

「いちゃりばちょーでー」。「出逢えば皆兄弟」という意味の沖縄の方言だ。沖縄の人たちはまさに「いちゃりばちょーでー」だった。名字ではなく下の名前で呼び合う人懐っこさ。誰もが温かく親切に接してくれる。営業活動で飲食店を訪ねれば、初対面のお客さんたちともすぐに親しくなり、一緒に飲み、語り合う。そして、いつもどこからか流れてくる沖縄音楽。心癒やされる、居心地のいい空間だった。「人の繋がりを大切にするところだと感じました。数カ月ですっかり沖縄に『同化』しましたね(笑)」

そしてさらに、ある出来事が待ち受けていた。板倉さん曰く、「大変なことが起こったんです」

三線を猛練習

沖縄で20年も続いている音楽イベントがある。その名も「いちゃりばちょーでー琉球民謡大会」。沖縄県外出身の転勤族による企業対抗ののど自慢大会だ。元日にTV放送もされている。

「オリオンビール代表として出場しなさい」。出向先から社命が下った。

「得意先の島唄ライブ居酒屋の大将に教わって、民謡と三線(琉球三味線)を本格的に練習しました。当時中学1年だった息子にも無理やりキーボードを弾かせました」

その結果は…なんと優勝!「そこから三線と沖縄音楽にはまりましたね」

三線を弾きながら、みんなと一緒に歌って飲む。「音楽を通して一気に親しくなれるんですよ」。その後の「いちゃりばちょーでー」な板倉さんが目に浮かぶ。

沖縄での体験を元に、次の勤務地・京都では「歌声ビアホール」を企画。1960年代に流行した「歌声喫茶」のように、お客さんがビールを楽しみながら、懐かしの名曲を合唱するイベントだ。「参加者は団塊の世代が中心ですが、若い頃を思い出しながら、楽しそうに歌い、大いに飲む。お客様のあふれる笑顔が忘れられないですね」

応援に力をもらって

沖縄時代には、那覇市で毎年行われる「NAHAマラソン」にも出場した。「誘われて仕方なく出たんです」。しかしその後、三線に続く2つ目の「生涯の趣味」となった。「走っている時は、『なんでこんな苦しいことをやっているんだろう』って思うんですけど、沿道でたくさんの人々が『ちばりよー』とランナーを励まし、食べ物を差し出してくれる。歌や踊りの応援もあるんです。42キロの間、ず~っとですよ」。応援に力をもらって走り切る。ゴールした瞬間の達成感と、もうひとつ、大きな喜びがある。「そのあとに飲む『スーパードライ』。これがたまらないんですよね」

文化を伝えていきたい

「その土地の文化に触れることができる。転勤族の醍醐味ですよね」。昨年から四国八十八ヶ所霊場めぐりをスタート。四国遍路の世界遺産登録を目指す活動を、アサヒビールでも応援することになり、自身も実際に遍路道を歩いてみることにした。

「各地の文化を伝えていくのが私たち転勤族の役目、と言ったら少しオーバーですが、香川で学んだこともまた、いろんな人に紹介していきたいですね」

板倉 茂樹 | いたくら しげき

略歴
1960年 9月13日 京都市左京区生まれ
1983年 3月 関西大学社会学部 卒業
1988年 3月 アサヒビール株式会社 入社
1998年 9月 東京支社 東京東支店 支店長
2000年10月 四国地区本部 営業企画部 部長
2003年 9月 酒類本部 営業第三部 部長
2005年 4月 オリオンビール株式会社 出向
2007年 9月 京滋支社 支社長
2011年 9月 四国統括本部 本部長

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