
目的地へ向かう際、一番の頼りになる案内標識。昼夜、そして悪天候にも関係なく、標識は視界に飛び込んでくる。しかし、それは決して偶然ではない。
「どうすれば標識が見やすくなるのか」―道路標識を製造する株式会社コートの堀 具王社長は情熱の全てをその1点に注ぎ込む。
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「『命を守る』という非常に大切な仕事だと思っています」―
大きな矢印で目的地の方向を知らせてくれる案内標識。また制限速度や一方通行などを呼びかける規制標識、さらには道路に書かれた横断歩道などの路面標示・・・・・・四国内のあらゆる道路で見かける標識の、実に8割以上を製造しているのが三木町にある株式会社コートだ。
「より見やすく」するために標識には様々な工夫と技術が注ぎ込まれている。みなさんは案内標識に書かれている地名が以前より大きくなっていることにお気づきだろうか・・・・・・。
重要ポイントは「反射」

標識の表面には、太陽光や車のヘッドライトをより効率よく反射する特殊な素材が使われている。かつては「ガラスビーズ」素材が主流だったが、コートではここ数年、反射がより広がる「多面体プリズム型」素材を導入。その明るさは、大型トラックや普通車、軽自動車など、あらゆる車種のドライバーの視界に対応している。
また最近では、夜になると文字がくっきりと浮かび上がる、光源が備わった「内部照明式」標識をよく見かけるようになった。これも反射を利用して標識全体に明るさのムラができないよう工夫されている。さらに、内部照明式標識の表面をアクリルから繊維シートに切り替えた。これにより超大型の標識製造が可能に。この技術は、数ある全国のメーカーの中でもコートがパイオニアだ。
まだある。夕暮れ時に高速道路を走行中、逆光で標識が真っ暗になり、ほとんど見えなくなった経験はないだろうか。堀さんが「逆光でもよく見えるように改良した標識です」と、実物を見せてくれた。表面の文字には無数の穴。太陽光がこの穴を通り抜け、文字だけが光って浮かび上がるようになっている。
運転中、無意識のうちに標識の情報を認識していたとしても、それは決して偶然ではないのだ。
「エコ」と「観光」
「取引先は国土交通省や県、市などがほとんどですが、今はどこもが『予算削減』。これからは、既にあるものをどのように生かしていくかという方向に進めていきます」
内部照明式標識の光源部の取り換えがスムーズにできるなど、メンテナンスをしやすい商品の提案のほか、今特に力を入れているのが「エコ化」だ。「光源に太陽光発電を利用したり、光源自体も蛍光灯からLEDに切り替えたりしています。LEDだと消費電力は蛍光灯の半分に、寿命は5~6倍も延びるんです。しかし設置に3倍のコストがかかるので、まだまだ抵抗感が強いですけどね・・・・・・」
さらに堀さんは観光地を案内する標識に、蓄積してきたノウハウを生かすチャンスがあると見ている。外国人観光客向けの案内も今後はもっと必要だ。「観光客は案内が悪いと『二度と来るか』って思ってしまいますよね。『もう一度来たい』と思ってくれるような案内ができたらなって考えています」
社長に就いてまもなく9年。大きな転換期に入ったと堀さんは話す。
交通事故のない社会へ
コートでは香川大学工学部との共同研究も進めている。例えば「高齢者対策」。標識周囲の明るさ、標識の色、それに文字の大きさや画数によってドライバーの見え方はどう変わるのか。また、お年寄りの場合はどうなるのだろうか・・・・・・。
「見やすさ」を追い求めて―安全な社会に繋がる標識がまた生み出されて行く。
堀 具王
株式会社コート
- 住所
- 香川県木田郡三木町下高岡3222
- 代表電話番号
- 087-898-6110
- 設立
- 1989年
- 社員数
- 65人
- 事業内容
- 道路・案内標識の製造
- 沿革
- 1956年 香東電機株式会社の事業部として発足
1970年 大阪支店 開設
1984年 東京事務所 開設
1989年 株式会社コート 設立登記 - 資本金
- 9700万円
- 地図
- URL
- http://www.kotokoto.co.jp/
- 確認日
- 2011.01.06
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