きれいに洗って何度でも
資源としてのドラム缶の循環はこうだ。新缶製造業者が製造した新しいドラム缶は石油会社や化学会社、塗料会社などで内容物を充填され、それぞれのユーザー事業所(たとえば、ガソリンスタンドや整備工場、化学品ユーザーなど)に搬入される。各事業所で内容物を消費して空になったドラム缶は、四国空缶工業などのドラム缶再生業者によって回収。再生できるもの、できないものに分別され、再生可能なドラム缶は洗浄・更正され、再び石油会社や化学会社、塗料会社などに出荷される。一方再生不可能なドラム缶はスクラップとなるが、鉄鋼副原料として再資源化される。こうして資源の再生サイクルが続いていくのだ。
廃業寸前から巻き返し。少人数制で小回りを優先
小野さんは、設備を一新し、規模を小さくして再出発を図った。岡山県の同業者からの助けもあった。洗浄の技術も高めた。努力は実り業績は戻ってきた。
一口にドラム缶を洗浄し更正させるといっても様々な工程があり、まずドラム缶を選別することから始まる。ドラム缶は上部の蓋をしたまま更正されるクローズドドラムと、蓋を外して更正されるオープンドラム缶に大別される。そのうえに、内面の塗装の有無、充填される溶剤によっての塗装の成分、ドラム缶そのもの素材などで細かく分けられる。選別されたドラム缶は、縁を整形し、中に残った化学薬品などの前充填溶液を抜き取ったあと(この溶液は種類ごとにまとめられて、再び使用)、胴体の整形をすませたら洗浄に進む。3段階での入念な洗浄を終えた時点で、缶を水槽の中につけて気密を試験、穴があいていないことを確認し、乾燥させる。前会社のカラー塗装を落とし、納入先のブランドカラーに塗り替えて、更正ドラム缶は出荷されていく。
この工場のラインには小野さんの工夫がある。あえて自動化していないのだ。同社の顧客は回収、出荷ともに主に四国内の事業所が中心だ。規模の大小や、回収される缶の数量や状態の幅は大きい。個々の状態に工程をフレキシブルに対応することを目的としている。決して大きくない工場だからこそできること。小さなロットにも対応できる小回りの良さが売りの一つとなっている。
四国内のお客様と一緒に成長していきたい
小野さんは自社を大規模にしようとは考えていないという。「永く続けることが第一。そのためにはコンパクトで体力のある会社にしたい。地域に見合った大きさってあると思うんですよね」。小さいけれど、あそこは何でもできる、なんとかしてくれると頼りにされる会社にしたい。「無理を聞いてくれると言うことは、信用があるということ。顧客を大切にオリジナルでやっていきたい」
小さいけれど、魅力はずっと変わらない。無理をして大きくしてまずい味にはしたくない。「安くておいしければつぶれない。うどん屋さんと同じような気がしますね」
小野 勝宏
四国空缶工業株式会社
- 住所
- 香川県高松市朝日町4-13-31
- 代表電話番号
- 087-851-0428
- 設立
- 1963年
- 社員数
- 7人
- 事業内容
- 四国内の事業所からの空ドラム缶の回収・洗浄・更正・出荷
- 沿革
- 1963年6月7日 故小野喜義により高松市に創業
2002年 小野勝宏が代表取締役社長に就任 - 資本金
- 1000万円
- 地図
- 確認日
- 2009.09.17
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