ドラム缶リユースで資源を活かす。容器物流システムで、
四国地域の経済活動に貢献したい

四国空缶工業 代表取締役社長 小野 勝宏さん

Interview

2009.09.17

石油会社や化学会社、塗料会社などから出る使用済みの空き缶を回収・洗浄し、再使用するドラム缶再生事業。高松市朝日町の四国空缶工業株式会社は、1963(昭和38)年の創業当時からこの事業を続けてきた。経済活動はもちろんだが、循環型社会の構築が課題の現代、資源をそのままの形で再利用するシステムにも注目だ。

きれいに洗って何度でも

「いつのころからか大量消費、使い捨てが当たり前のような社会になりましたが、以前の日本には、ものを大事にする、使えるものは何度でも使う、という気持ちがありましたよね。このドラム缶再生事業も同じこと。使用したドラム缶も使えるものは中をきれいに洗って再び使ってもらおう、ものを大事にしようということなんです」と四国空缶工業代表取締役の小野勝宏さん(39)は語る。1963年創業の同社は、一斗缶18リットルの洗浄・更正から始まり、現在ではドラム缶200リットルの洗浄・更正を事業の中心に据えている。

資源としてのドラム缶の循環はこうだ。新缶製造業者が製造した新しいドラム缶は石油会社や化学会社、塗料会社などで内容物を充填され、それぞれのユーザー事業所(たとえば、ガソリンスタンドや整備工場、化学品ユーザーなど)に搬入される。各事業所で内容物を消費して空になったドラム缶は、四国空缶工業などのドラム缶再生業者によって回収。再生できるもの、できないものに分別され、再生可能なドラム缶は洗浄・更正され、再び石油会社や化学会社、塗料会社などに出荷される。一方再生不可能なドラム缶はスクラップとなるが、鉄鋼副原料として再資源化される。こうして資源の再生サイクルが続いていくのだ。

廃業寸前から巻き返し。少人数制で小回りを優先

主に四国内の事業所から空ドラム缶を回収、洗浄・更正し出荷する。その数は年間2万5000本(2008年度)という四国空缶工業だが、異なる業界でサラリーマンをしていた小野勝宏さんが先代社長の祖父から事業を引き継いだ1999年当時は、「今だから言えますが、会社の経営はどん底だったですよ」。工場内の設備は古く時代から取り残され、売り上げも落ち、いつ廃業となってもおかしくない状態だったという。「本当にどうしようかと思った。ただ祖父は多くの人から慕われてもいて、先代からのお客さんからはやめられたら困るとも言われまして」

小野さんは、設備を一新し、規模を小さくして再出発を図った。岡山県の同業者からの助けもあった。洗浄の技術も高めた。努力は実り業績は戻ってきた。
一口にドラム缶を洗浄し更正させるといっても様々な工程があり、まずドラム缶を選別することから始まる。ドラム缶は上部の蓋をしたまま更正されるクローズドドラムと、蓋を外して更正されるオープンドラム缶に大別される。そのうえに、内面の塗装の有無、充填される溶剤によっての塗装の成分、ドラム缶そのもの素材などで細かく分けられる。選別されたドラム缶は、縁を整形し、中に残った化学薬品などの前充填溶液を抜き取ったあと(この溶液は種類ごとにまとめられて、再び使用)、胴体の整形をすませたら洗浄に進む。3段階での入念な洗浄を終えた時点で、缶を水槽の中につけて気密を試験、穴があいていないことを確認し、乾燥させる。前会社のカラー塗装を落とし、納入先のブランドカラーに塗り替えて、更正ドラム缶は出荷されていく。

この工場のラインには小野さんの工夫がある。あえて自動化していないのだ。同社の顧客は回収、出荷ともに主に四国内の事業所が中心だ。規模の大小や、回収される缶の数量や状態の幅は大きい。個々の状態に工程をフレキシブルに対応することを目的としている。決して大きくない工場だからこそできること。小さなロットにも対応できる小回りの良さが売りの一つとなっている。

四国内のお客様と一緒に成長していきたい

自社の再生缶の価格を少しでも抑えて、四国内の顧客に提供するのが、小野さんの考えだ。「関西の業者が四国に送りこんでくる更正ドラム缶の価格には、運賃や明石大橋や瀬戸大橋などの通行料金なども反映されているはず。その価格と、四国内の我が社の価格が同じであってはおかしい。企業努力で値段を少しでも安くしたい」。少人数のスタッフで工程をカバーすることでコストを抑え、出荷先への納入額を少しでも安く設定する。「更正ドラム缶を安く提供することは、四国の企業の競争力向上にも繋がるはずです。四国内の企業は、関西や中国など他地域と価格で競争するのは厳しい部分がある。本州までの運賃コストがプラスされるからです。それなら少しでも安い容器=再生ドラム缶を購入してもらい、完成品を競争力のある価格になるように私たちも協力したい。四国内のお客さまと一緒に勝負したいんですよ」。再生ドラム缶を少しでも安く提供すること。顧客からの信頼を得るための企業努力は惜しまない。

小野さんは自社を大規模にしようとは考えていないという。「永く続けることが第一。そのためにはコンパクトで体力のある会社にしたい。地域に見合った大きさってあると思うんですよね」。小さいけれど、あそこは何でもできる、なんとかしてくれると頼りにされる会社にしたい。「無理を聞いてくれると言うことは、信用があるということ。顧客を大切にオリジナルでやっていきたい」

小さいけれど、魅力はずっと変わらない。無理をして大きくしてまずい味にはしたくない。「安くておいしければつぶれない。うどん屋さんと同じような気がしますね」

小野 勝宏

四国空缶工業株式会社

住所
香川県高松市朝日町4-13-31
代表電話番号
087-851-0428
設立
1963年
社員数
7人
事業内容
四国内の事業所からの空ドラム缶の回収・洗浄・更正・出荷
沿革
1963年6月7日 故小野喜義により高松市に創業
2002年 小野勝宏が代表取締役社長に就任
資本金
1000万円
地図
確認日
2009.09.17

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