ブランド化で農業のイメージを変える

畔家 片岡 雅喜さん

Interview

2019.05.02

アゼヤズキッチンで。ロゴははぜ掛けがモチーフ

アゼヤズキッチンで。ロゴははぜ掛けがモチーフ

結婚前、妻の祖母が住む香川に挨拶に来て、祖父が始めた田んぼで取れたお米のおいしさに驚いた。「最近は収穫した稲を機械乾燥するのが主流ですが、ここは田んぼに杭を打って作った稲木に稲を一束ずつかけて天日干しする『はぜ掛け』。昔ながらの農法を守っていて感動しました」

無農薬でこんなに手間をかけていることを伝えたい、農法を次の世代につなぎたい――そう思うといてもたってもいられなくなり、横浜でデザイナーをしていたが2016年、結婚して2カ月後に香川に移住した。
農業に携わるようになって感じたのは、新たに始めたいと思ってもハードルが高いということ。「米や野菜などを売って生計を立てるには、広大な土地で大規模に収穫しないと厳しい。若者が参入しづらいから高齢化が進んで土地を手放す。近所の田畑にも家やマンションが建っています」。現状を目の当たりにする中で“小さいからこそできるやり方”があるはず、と模索し始めた。
農園でとれた米と野菜のおいしさを味わえるわっぱ弁当

農園でとれた米と野菜のおいしさを味わえるわっぱ弁当

その一つが「畔家ブランド」のコアなファンを増やしていくことだ。8反という小さな規模だから無農薬、はぜ掛け…など手間をかけて健康にもいいお米や野菜を作ることができる。それらをわっぱ弁当や甘酒、塩こうじ、米糀のかき氷などにして、お米や野菜のおいしさを知ってもらう。興味を持ってくれた人に、活動や思いを伝えていく。「商品がおいしかったら、原材料であるお米や野菜はどうやって作っているのか、背景にある思いを知りたくなると思うんです」

これらの活動を「畔家」というブランドで発信。ブランドは農園「アゼヤファーム」と、ハーブを育ててブーケやハーブティーの販売を手掛ける「アゼヤガーデン」、弁当やランチが味わえる「アゼヤズキッチン」などがある。それらのイメージを統一してロゴやパッケージを作り、包装やネット販売の発送もスタッフがしている。

「原材料をつくるところから自分たちでやることが、こんなに楽しいとは思いませんでした」。作物を収穫して売るだけが農業ではない。お客さんに届く商品まで手掛けることで可能性が広がる。それをおもしろいと思って農業をやろうという若者が増えたら嬉しいという。
地元の人と田植え体験

地元の人と田植え体験

横浜にいた頃は、デザイナーとして商品のブランディングにも携わった。「商品の背景にあるストーリーを考えてデザインで表現する。当時は自分が商品を世に送り出していると勘違いしていたけれど、完成したものをどう売るか考えていただけ。今は原材料から携わる楽しさを知ってしまった。ストーリーなんて考えなくても語ることはいくらでもあります」

自分たちの活動を、大都市ではなくまずは香川の人に知ってほしいという。「地元に愛されない商品は長続きしないと思うから」。そこで、地元の人を集めて田植え体験やワークショップを積極的に開催している。香川のお店や伝統工芸士さんとつながり、新たな商品開発も進めている。「食の大切さを伝えたい、農業人口を増やしたい…そのためにやりたいことはいくらでもあります」

石川恭子

片岡 雅喜 | かたおか まさよし

略歴
1970年 横浜市生まれ
1989年 神奈川県立寛政高校 卒業
1990年 有限会社房陽舎 入社
     デザイン業、店舗プロデュース等を手がける
2016年 香川へ移住
     畔家の活動を始める

畔家

住所
香川県高松市林町1138-1
代表電話番号
087-815-1545
設立
2016年
事業内容
米、野菜の生産加工販売、弁当テイクアウト、ハーブアレンジメント店運営

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ