香川のおいしいものを、香川の人に届ける

SANUKIS(サヌキス)代表 鹿庭 大智(かにわだいち)さん

Interview

2019.10.03

県産唐辛子「香川本鷹」を手に

県産唐辛子「香川本鷹」を手に

「食べ物を選ぶ基準が値段だけってめちゃくちゃ寂しい。自分や家族の体、長い目で見れば人生をつくるものなのに」。SANUKISは、鹿庭大智さん(39)が代表を務める高松市今新町にある八百屋だ。生産者を訪ねて、野菜を仕入れる。「この人の野菜を売りたい、おいしいからお客さんにも食べてほしいと思ったものを選んでいます」

毎日、朝6時から昼過ぎまで県内の農家を回る。こまめに仕入れることで、店頭にはいつも新鮮な野菜が並ぶ。香川県産を中心に常時50~60種類の野菜を販売。秋のおすすめは、坂出の金時芋と鳴門のしらゆき蓮根だという。手作りのポップには、その野菜がどうやって作られたかや、おいしい食べ方を書く。「どっちがおいしい?」「どうやって食べるの?」などお客さんとの会話も大事にしている。
秋~冬におすすめの坂出の金時芋(上)と、鳴門のしらゆき蓮根

秋~冬におすすめの坂出の金時芋(上)と、鳴門のしらゆき蓮根

鹿庭さんは大学卒業後、土いじりが好きだったことと教授のすすめもあって、アスパラ農家に就職。3年働いて八百屋に転職した。食堂の軒先で野菜を売る、2坪ほどの小さな店の雇われ店長だ。

店頭に立って初めて、アスパラ以外の野菜のことを何も知らないと気が付いた。「小松菜とチンゲン菜の違いも説明できなかった。本だけではだめだと、生産者の元を訪ねるようになったのが、今の販売スタイルにつながりました」。生産者になかなか相手にしてもらえないこともあった。足しげく通い、試食用に野菜をもらったらその場で食べて率直な感想を言うことを続けてきた。

農家の経験があったため、農家のためになることがしたいと考え、形や大きさなど規格外品を量り売りすることも始めた。店を食堂の軒先の南新町から現在の今新町に移転し、売り場も10倍以上に広くなった。2016年、店を買い取って独立。あらためて、何のために八百屋をするのか考えた。大型スーパーに比べると流通量多くはないため、農家の売上に大きな貢献できない。SANUKISだからできること、自分がしたいことは何か。

「昔から『恩送り』という言葉が好きでした。自分が受けた恩を、相手だけでなく周りの人や次の世代にも送りたい。地域の人に育ててもらった店だから、地域のために働きたいと思いました」

「ネット通販したらいいのに」「都会でやれば儲かる」と言われることがあるが、鹿庭さんは香川で実店舗の八百屋を続けることに意味があると考えている。「八百屋は地域を彩るために必要な店だと思う。こういう八百屋があると知ってほしい。実際に来て、買って、食べてもらえれば、野菜の良さが分かります」

香川のおいしいものを、香川の人に届けることが鹿庭さんの役割だ。
「三豊なすも香川本鷹も、おいしいから食べたいし、残していきたい。うどんのように、県内どこに行っても、県産の野菜が食べられるようになるのが理想です」

ゆくゆくは、食に関する塾や学校のようなものをつくりたいという。「農家の仕事を丸一日体験したり、採れたての野菜を料理したり。子どもや料理人のたまごたちが香川の野菜のおいしさを知って、一度都会に出てもまた帰ってきたくなるような仕掛けができたら」

鎌田 佳子

鹿庭 大智|かにわ だいち

略歴
1980年 さぬき市生まれ
1999年 高松東高校 卒業
2006年 香川大学教育学部 卒業
アスパラ農家、八百屋での勤務を経て
2016年 独立(株式会社coco・kara設立、屋号はSANUKIS)

SANUKIS

住所
香川県高松市今新町7‐10武田ビル1F
代表電話番号
087-813-0883
事業内容
香川県産を中心とした野菜の販売
地図
確認日
2019.09.27

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ