売上高2兆円、利益1.7兆円が消失

上場企業「新型コロナウイルス」の影響と資金借入状況 東京商工リサーチ

Research

2020.05.08

「新型コロナウイルス」の影響を受け、業績を下方修正する上場企業が相次いでいる。4月21日までに売上高や利益の下方修正を開示した上場企業は265社にのぼり、売上高が2兆954億円、最終利益は1兆7,013億円が消失した。

売上高、利益の下方修正分は、3月27日に売上高が1兆円を突破したが(135社、売上高▲1兆1,944億円、利益▲1兆1,177億円)、その後も下方修正を開示する企業が続出。わずか1カ月足らずで売上の下方修正は約1.7倍、利益の下方修正分は1.5倍に膨らんだ。

※2020年1月23日以降、適時開示で「業績予想の修正」や「従来予想と実績との差異」などで業績の下方修正を開示した上場企業のうち、新型コロナウイルスの影響を理由としているものを抽出。

※「資金借入」については、上場企業が開示した「資金の借入に関するお知らせ」で、借入理由として「新型コロナウイルス」の影響をあげたものを集計。集計期間は4月21日まで。

1,000億円以上は6社

売上高の下方修正額の最大は、石油元売り大手のJXTGホールディングス(株)で、航空船舶輸送の減少などを理由に通期の売上を前回予想から3,500億円引き下げた。

下方修正企業の業種別では、製造業が102社で約4割を占めた。製造拠点の中国での混乱に始まり、サプライチェーンの乱れ、世界的な景気の停滞に伴う販売市場の縮小など、多大な影響が及んでいる。外出自粛などに伴う国内消費の落ち込みの影響を受けたサービス業の55社、小売業の46社と続き、上位3業種で203社と7割以上を占めた。

資金繰りにも影響

感染拡大は上場企業の資金繰りにも影響している。取締役会で金融機関から「資金の借入」を決議、公表した上場企業は、3月は6社だったが、4月は1日から21日までに20社が公表し、合計26社に達した。借入総額は1,869億円にのぼり、26社中18社(構成比69.2%)は、担保等の設定は「無し」と開示した。26社のうち、金額が最も大きかったのは、(株)レスターホールディングス(半導体・電子部品商社)の600億円。

サービス業が最多の12社

資金借入の業種別では、サービス業が12社で最多。旅行業の(株)旅工房や、クルーズ船予約サイト運営の(株)ベストワンドットコム、ホテル運営のワシントンホテル(株)など、インバウンドや旅行手控えの影響が直撃した観光や宿泊業、キャンセルが相次いだブライダル関連の企業が目立つ。

新型コロナウイルスの影響による国内外の経済環境の悪化が懸念されている。緊急事態宣言の終息時期が不透明だけに、上場企業でも銀行借入を通じてキャッシュポジションを高め、運転資金を確保する動きが進むとみられる。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 立花 正伸

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