廃業前決算「黒字」が減少
2021年香川県「休廃業・解散企業」動向調査

東京商工リサーチ

Research

2022.04.07

2021年の「休廃業・解散」企業(以下、休廃業企業)は、香川県で363件だった。コロナ禍での政府や自治体、金融機関の強力な資金繰り支援で、「倒産」は39件と1971年以来、5番目の低水準となった。ただ、「休廃業」は、統計を開始した2000年以降、4番目の高水準で、倒産の9倍以上の企業が休廃業している。代表者の高齢化などを背景に、休廃業への対応が急務である状況に変わりはない。

※東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベースから、「休廃業・解散」が判明した企業を抽出。「休廃業・解散」は、倒産(法的整理、私的整理)以外で、事業活動を停止した企業と定義した。

産業別 4産業で減少

産業別では、10産業のうち建設業、小売業、金融・保険業、不動産業の4産業で減少、農・林・漁・鉱業、運輸業、情報通信業の3産業で前年同数、製造業、卸売業、サービス業他の3産業が増加した。最多は、飲食業や宿泊業、非営利的団体などを含むサービス業他の114件(構成比31.4%、前年比11.8%増)。以下、建設業、製造業と小売業、卸売業、不動産業と続く。

廃業前 黒字は57.5%

休廃業する直前期の決算では、21年は当期損益の黒字は57.5%だった。前年から10.5ポイントダウンして60%を割り込み、6年連続減少した。特に20年、21年はコロナ禍での経営環境の激変が損益に大きな影響を与え、休廃業の決断を促した可能性が浮かび上がる。

※直前期は、休廃業・解散から最大2年業績データを遡り、最新期を採用した。

進む代表者の高齢化

休廃業企業の代表者の年齢別(判明分)は、70代が最も多く44.3%を占めた。以下、60代の27.0%、80代以上の18.0%と続き、60代以上が89.2%を占め、60代以上の構成比は前年より1.6ポイント増加した。17年までは60代が最多だったが、17年以降70代が最多となっており、代表者の高齢化が進んでいる。


政府や自治体、金融機関の事業承継に向けた取り組みは、「稼ぐ力」のある企業の廃業は地域経済や国力にネガティブなインパクトを与えるとの視点に立っていた。だが、今回の調査で、休廃業企業の稼ぐ力そのものが大きく低下していることがわかった。政府は、事業再構築などウィズコロナ、ポストコロナを生き抜くための事業転換を支援する政策を打ち出しているが、休廃業の危機にさらされている企業の経営者年齢は高く、再構築意欲を失っていることも想定される。

コロナ禍で取り巻く環境が大きく変わり、地域経済や雇用・サプライチェーン維持、技術承継の観点のみではカバーしきれない面もありそうだ。ライフステージ後期の企業への支援は、経済的側面だけでなく、高齢の経営者や従業員の生活保障を含めた視点も加味して議論する時期に差し掛かっている。

東京商工リサーチ四国地区本部長兼高松支社長 有馬 知樹

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