達成感と自信、 ありがとうが原動力

山和土木興業 山西 優子さん

Interview

2015.08.20

「うちは職人が一流なんですよ」。山西優子さん(34)は目を輝かせながらそう話す。「一人の社員も手放せないんです。社員を守るためなら何にでも挑戦します」。父が設立し代表を務める山和土木興業で、弟と共に働く。

仕事に傾ける情熱が全身からにじみ出ているような山西さんだが、家業を手伝い始めた時は「弟が入社するまでのつなぎ役」くらいに思っていた。大学では文学部に進学し、書道を専攻。土木とは無縁の世界にいた。

書道で食べていくのは難しい。そう思っていた頃、父に声を掛けられて仕事を始め、損害物復旧工事を担当することになった。保険会社から依頼を受けて、自動車事故や自然災害などで壊れた公共物、住宅を調査して修繕する仕事だ。働きながら勉強にも励み、二級建築士、宅地建物取引主任者、損害保険登録鑑定人の資格を取得した。

「外壁など壊れていたものがきれいに直る。それを間近で見て、職人さんってすごいと心から思いました」。現場に同行し、大工や左官など職人の技を目の当たりにするたび感嘆の声を上げた。完成にたどり着くまでの方法は人によって違うため、どの現場に行っても毎回新鮮に感じる。どんどん土木工事の面白さにのめり込んでいった。

もちろん楽しいことばかりではない。自動車事故で被害を受けた住宅を修繕する時には、住人からやり場のない怒りをぶつけられることがある。男性が多い業界の中で、素人扱いされることもある。「素人だと見られることが、かえって良かった。男性や職人さんにはお願いしにくいことも相談出来ると、喜んでくれる人もいます」
損害物復旧工事だけで、月に130~150件の依頼を受けている。そのうち約半数が、個人の住宅での作業だ。訪問を重ねると打ち解けて、事故に対して怒っていた人も最後にはありがとうと言ってくれる。「台所が使いづらいんやけど、何とかならんかな」といった相談をされることもあった。新築から20~30年経つ住宅では家に関する悩みが多い。インターネットをあまり使わないお年寄りが「直してほしいけれど、どこに相談すればよいか分からない」と困っていることに気が付いた。「どうにか力になりたい」という思いが大きくなっていった。

そして今年4月、新しい名刺を作った。「お家のお困りごと解決サービス」の開始をPRするためだ。掃除、草抜き、リフォーム、外壁・車庫の修繕、耐震診断・・・家に関するありとあらゆる相談に乗るというものだ。

一人の女性の存在が、事業立ち上げの背中を押した。3年前に車庫を修繕した住宅の女性から、家の中に手すりを付けてほしいと電話がかかってきたのだ。けがと高齢のため歩くのに不自由しているとのことだった。「3年も前のことを覚えていてくれたんだとうれしくなりました」。自分も力になれる。新事業への挑戦を決めた。

これまで、物置を解体して駐車場にしてほしい、お風呂を改修してほしいといった相談に対応した。事業開始と同時にガス会社とも提携。作業員が点検で住宅を訪問した時に、家に関する悩みをよく相談されるからだ。

住宅の新築の相談も受けられるようにしようと、6月には会社の一部門として建築士事務所「優工房」を立ち上げた。こんなことが「出来た」という達成感と、自分でも「出来るんだ」という自信が山西さんの原動力になっている。工務店で働く夫の支えも大きい。土木会社と工務店、お互いの家業が良い刺激になっている。

終始、笑顔で話す山西さん。怒っていた人さえも、最後には心を許して相談までしてしまう。そんな場面が目に浮かんだ。

山西 優子 | やまにし ゆうこ

1981年6月 東かがわ市生まれ
2004年3月 高野山大学 卒業
2004年8月 山和土木興業株式会社 入社
      物損事故の損害物復旧工事、民間工事を担当
2007年12月 二級建築士 資格取得
2009年12月 宅地建物取引主任者 資格取得
2010年4月 損害保険登録鑑定人 資格取得
2015年4月 お家のお困りごと解決サービス事業開始、事業担当に就任
2015年6月 山和土木興業事務所内に建築士事務所開設、管理建築士に就任
写真
山西 優子 | やまにし ゆうこ

山和土木興業株式会社

所在地
東かがわ市西村443−1
TEL
0879-24-1530
事業の概要
土木一式工事・建築一式工事・水道施設工事
緑化工事・電気工事の設計施工
産業廃棄物の収集・運搬・処理 など
資本金
2,000万円
社員数
23名
確認日
2018.01.04

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