手間をかけた育成と管理技術で
強い採卵鶏を育てる

新延孵化場

Tec✕Tec

2023.11.27

温暖な気候、関西圏などの消費地に近いことから昔から養鶏業が盛んな香川。養鶏は主に卵の生産と食肉用の鶏の飼育があり、最近は育成の機械化も進んでいる。

新延孵化場も養鶏業を展開しているが、特徴的なのは中四国で唯一、卵を産むための鶏「採卵鶏」の孵化・育成を手掛けている点だ。農場ではまず、種鶏から産まれた種卵を孵化させたら、その初生ひなを約4カ月かけて卵を産むための採卵鶏に育成して出荷する。

採卵鶏が生む卵は、鶏の種類によって殻の色が赤・白・ピンクと違い、出荷先がどんな卵を産む鶏を必要としているかによってオーダーメイドで育てる。温度・湿度といった環境を整えることで21日間ぴったりに孵化後、決められた出荷時期、数に合わせて高度な管理技術で育成、
約4カ月で採卵鶏になる。

また、ただ必要な数だけ採卵鶏を出荷すればいいわけではない。出荷先で病気にならず元気にきちんと卵を産むこと、つまり出荷した鶏たちの生存率と採卵率が高いことが取引先からの信頼につながる。そこで、孵化して1カ月はひよこをケージではなく平飼いにして適度な運動ができるようにして強いひなを育てる。機械ではなく、一羽ずつ手で確実にワクチンを打つといった“あえてのひと手間”をかけている。

一方で、採卵・洗浄、鶏舎からのふんの排出・清掃などはすべて自動。機械化も進めながら効率化と徹底した衛生管理を実施。丁寧に育てられた採卵鶏たちは、私たちの食卓を支えている。

どんな業務を担当していますか。

古志 朱里さん(高瀬高校出身)

古志 朱里さん(高瀬高校出身)

【林】平飼いで1カ月過ごしたひなをケージにうつすのですが、その育成舎で出荷までの育成を担当しています。以前は、孵化後1カ月までのひなの育成を担当していました。
 平飼いの育成舎では、1日に3回ほど巡回してひよこたちを動かしながら、餌を食べてないひよこがいないかなどを観察します。ケージに移動してからも、健康状態は常に気にかけています。元気に成長させることがこの仕事の使命だと思います。

【古志】種卵をセットして孵化前の準備、孵化後は雌雄を鑑別します。以前は鑑別に資格が必要でしたが、今は品種改良によって羽の形で雌雄がすぐ鑑別できるようになりました。あとは、ワクチン接種や点眼なども担当しています。多い時は会社全体で1日に5万羽のひなにワクチンを打つこともあります。

難しいと思うことはありますか。

林 宗平さん(丸亀高校通信制出身)

林 宗平さん(丸亀高校通信制出身)

【古志】ワクチン接種は最初ちょっと不安でした。ただ、きちんと接種できていないと病気になるので、確実に素早くワクチンを打つよう心がけています。一度、農場に手伝いに行った際、「あんなにかわいかったのに……」と大きくなった鶏の姿にちょっとびっくりしましたけど(笑)。元気に成長しているのを見ると嬉しいです。

【林】ケージでは少し照明を落としているので、鶏たちの変化をいち早く見つけ出すのが難しいです。ただ、照明の明るさには理由があって。採卵率にもかかわるので、明るさも温度も湿度も、出荷先の環境にできるだけ合わせています。

気を付けていることはありますか。

【古志】やはり衛生管理です。鶏舎に入る時の消毒の徹底、定期的な鶏舎の消毒はもちろん、出荷後の一斉清掃など、鶏が健康であることを一番心がけています。

【林】命を預かる仕事なので、私も衛生管理には気を付けています。それとストレスをかけないこと。鶏舎に入る時には驚かせないように静かに動くようにしています。

今後については、別の事業にも関わってみたい。弊社は孵化、育成以外に採卵鶏の親となる「種鶏」の育成や他の養鶏場と同じく卵の生産も行っていますが、種鶏場も経験してみたいと思っています。

高校の時にやっておいた方がいいこと

古志さん
自分の反省も含めてですが、社会に出てから何が役に立つか分からないので、やっぱり勉強は大切だと思います。

林さん
進路をいろいろ調べている時に偶然、養鶏業を知りました。将来を考える時は、興味をもったことから可能性を広げてください。

◆キーワード


飼養衛生管理基準

家畜の所有者が伝染病の感染を防ぐために守るべき基準のことで、2020年に大幅に改正された。具体的には、飼養衛生管理者を選任して従業者・関係者への「家畜防疫に関する理解と教育」を進める、「病原体の侵入防止」「病原体による汚染拡大の防止」のための体制づくり、区域外への「病原体拡散防止」についての基準が決められている。

有限会社 新延孵化場

所在地
三豊市三野町吉津甲984
TEL:0875-72-5141
FAX:0875-73-4471
創業
1930年
資本金
5000万円
事業内容
種鶏の育成、種卵生産、採卵鶏の育成、鶏卵の生産
沿革
1930年 新延嘉吉、下駄箱式孵卵器により創業
1949年 有限会社新延孵化場を設立
    初代取締役 新延嘉吉
1958年 新延正葭が代表取締役に就任
1969年 四国地区で初めて10万卵孵卵器を導入
本社社屋完成
1998年 リバーサイド育成場が完成し、育成能力220万羽に
1999年 最新の空調システムと殺菌装置を備えた貯卵室が完成
2000年 世界初の2階建て種鶏舎が神田種鶏場に完成
2003年 神田第2農場に成鶏農場が完成
2008年 二宮育成場に鶏糞ペレットマシン導入
確認日
2018.01.04

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