関西・瀬戸内 インバウンド観光の広域周遊活性化に向けて~2025年万博×瀬戸芸を起爆剤に、多様化するインバウンド訪日客のニーズを捉え、新たなゴールデンルートを~

日本政策投資銀行

Research

2024.03.07

日本政策投資銀行は、2025年に大阪・関西万博と瀬戸内国際芸術祭というインバウンドの呼び水となるイベントを控える関西と瀬戸内の両地域が広域連携し、訪日客の周遊活性化を促すための調査を実施している。23年4月に、コロナ前後のインバウンド市場を定量的に整理した上で、関西と瀬戸内の広域周遊が求められる理由や連携により発揮できる可能性を挙げたレポート第一弾を公表。24年3月には第二弾としてアジア・欧米豪向けインバウンドアンケートの関西・中国・四国地方統合版を公表予定である。

関西と四国は相互補完的な関係

関西と四国の連携が有効であることを示すデータの一つに、旅行口コミサイトで関西は上位50、四国は上位30にランクインした観光コンテンツを当行独自に4カテゴリーに分類し、分析したものがある。

関西では寺社仏閣が多く存在することを背景に「歴史・文化」が過半を占めるとともに、「観光施設・エンタメ等」の割合も高い一方で、「自然」は10%に留まる。それに対し、四国は屋島や小豆島等を含む「自然」の割合が最も高いことに加え、関西には入っていない「美術館・博物館」も20%と高い点が特徴である。この背景には、瀬戸内国際芸術祭の舞台である直島をはじめとするアートコンテンツが地域内に多く存在することが挙げられる。

このように、関西と四国の間では価値訴求の源泉が異なることから、インバウンドのパイを奪い合うというよりは相互補完的な関係にあることが見て取れる。

距離で見た関西と瀬戸内

関西と瀬戸内について、「距離が離れておりインバウンドにとって周遊しにくい」と指摘されることもあるが、直線距離では大阪から400km圏内にほとんどの地域が内包されている。

関西と瀬戸内の観光地の直線距離を、「世界の人気都市と一度の旅行で訪問する可能性が比較的高い自然・歴史・文化等独自の魅力を持つ観光地」の直線距離と比較すると、関西と瀬戸内の距離の方が近いことが分かる。一方、距離的には近いが移動に時間がかかる観光地もあることから、両地域の広域周遊には2次交通を含めた周遊性の向上も必要である。

関西×瀬戸内 新たなゴールデンルートの実現に向けて

関西×瀬戸内の広域周遊活性化に向けた提言として、①地域のDMC・DMO等を中心とした観光コンテンツの磨き上げ、②観光ガイド人材の育成、③DMOを中心としたプロモーション体制の整備、④「インバウンド目線」に立ち広域周遊をシームレスで実行できる体制の構築、の4点を挙げている。25年、さらにその先に向けた両地域の広域連携にあたって、これらの提言が中長期的なインバウンド観光の成長の一助となれば幸いである。

株式会社日本政策投資銀行四国支店 企画調査課 副調査役 藤岡 亜希子

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