企業支援の枠組み新設で、成長を促進し未来志向へ
~2024年香川県「中堅企業」動向調査~

東京商工リサーチ

Research

2024.07.04

香川県の「中堅企業」は42社

経済産業省は、大企業と中小企業の間に「中堅企業」という分類を新たに設け、税制優遇などの支援に乗り出す。従業員数が2,000人以下の企業が「中堅企業」と定義づけされる。

東京商工リサーチの企業データベースでは、2024年3月時点で香川県内の「中堅企業」は42社(前年同数、構成比0.35%)あることがわかった。このうち、23年の中小企業が、24年に「中堅企業」に規模を拡大した企業は1社だった。一方、「中堅企業」から「中小企業」へ規模が縮小した企業も1社あった。

中堅企業の産業別構成比は、最大はサービス業他の30.95%。次いで、小売業26.19%、製造業16.66%と続く。このほか、大企業はサービス業他50.0%、中小企業は建設業27.78%が最大だった。

従業員1人当たりの年間売上高 大企業と8,114万円の差

最新期における規模別の従業員1人当たりの売上高は、大企業1億2,852万円、中堅企業4,738万円、中小企業3,558万円。また、従業員1人当たりの当期利益は特殊事情のあった大企業はマイナス191万円、中堅企業220万円、中小企業75万円だった。

新たな枠組みで、成長意欲の高い企業を支援

大企業と比べて事業規模に成長余地を残している中堅企業に、賃上げや国内投資を後押しすることで、国内経済や地域経済に好循環をもたらすことが期待されている。

これまで中小企業向けの支援は手厚く、弱い立場の中小企業が守られてきた。一方、中小企業向けの優遇を受けるため、安易な減資や従業員数の制限で企業規模の拡大を抑える企業もみられた。こうした企業の成長を抑制する動きによって、日本の中小企業の生産性、収益性を低迷させていた側面がある。

今回の新たな枠組みの設定で、国は成長意欲の高い企業への支援に力を入れる。弱者救済のための支援から、設備投資や人的投資、研究開発など、成長を目的とした「企業活動」への支援に軸足を移すことで日本企業の成長を促進する。こうした支援で中小企業に明確な目標像を与えると同時に、中堅企業への規模拡大のモチベーションにつながることが期待される。また、生産性は賃金に直結するため、労働者が生産性の低い企業から生産性が高く待遇の良い企業に流れる動きが加速すると考えられる。設備投資・人的投資を怠り、成長意欲が低い中小企業の淘汰が始まるだろう。

企業全体を未来志向に導くことはできるか

一方で、現状は足踏み状態にあるが、意欲があり成長の芽がある中小企業にはチャンスを与えるべきだ。また、大企業から中堅企業への規模縮小など、大企業や中堅企業になった後の成長の停滞を防ぐ必要はある。中小企業から中堅企業、中堅企業から大企業への成長の道筋に具体性を与え、国内企業全体を未来志向に導くことができるかが重要となってくる。

なお、大企業の該当者数が4社と少ない中において、四国電力(株)が21年3月期より3期連続の大幅赤字を計上するという特殊事情があったため、大企業の集計数値は極端なものとなっている。

東京商工リサーチ四国地区本部長兼高松支社長 波田 博

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