雑草はなぜそこに生えているのか

著者 稲垣 栄洋/筑摩書房

column

2018.03.01

今回は雑草の本を取り上げます。おそらく大抵の人は地味で退屈な本だと思われるでしょう。しかしながら雑草というものは、田畑で農作物を作る人はもちろん、庭いじりをする人、家庭菜園にいそしむ人たちにとっては天敵ともいえるものです。花や野菜を作ったことのある人なら誰もが経験されていると思いますが、恐るべきは雑草の生命力で、高温多湿の日本においては、夏にはほんの少しの間でも草取りをサボると、あっという間にそこら一面雑草だらけにしてしまいます。

私たち人類にはその苦労から解放される日が来るのでしょうか。本書ではその可能性について探っていきます。雑草とは「望まれないところに生える植物である」と定義されていますが、この考え方は西洋の考え方であって、日本では少し異なります。たとえば「雑草の研究をしています」と言いますと「ずいぶん変わったことをしていますね」と受け取られます。西洋ではそういう反応ではなく「雑草を退治する良い研究ですね」と言われます。日本の研究者にとっては残念なことではありますが、しかし著者によると、これは日本人の自然観の素晴らしさが関係していると言います。

どういうことかと言いますと、西洋では自然は征服し、雑草は排除するものです。それに対し日本では、雑草を邪魔者として排除するという考え方がどうも薄いようです。それどころか雑草魂という言葉もあって良いイメージもあります。雑草をほめ言葉にも使うのは、世界でも日本だけのようです。

実際のところ、雑草は意外と競争力のない弱い植物で人が手を加えなければ無くなると言います。その分、生き残るために人の決めた分類や「こうあるべき」という考え方を飛び越しその生き方はとても自由です。ちなみに未来の草むしり機をドラえもんに頼んだのび太は、即座に「そんなものはない」と断られます。

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
写真
宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

記事一覧

おすすめ記事

関連タグ

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ