地元の素材を活かしながら
新たなイメージの商品をつくる

西野金陵

Cha✕Cha

2025.09.15

左:多度津工場・琴平工場 製造課長 酒井 史朗さん(高松西高校出身) 右:自製酒部 前川 卓哉さん(多度津高校出身)

左:多度津工場・琴平工場 製造課長 酒井 史朗さん(高松西高校出身)
右:自製酒部 前川 卓哉さん(多度津高校出身)

企業が行う事業内容もよく知られ、定番商品も広く認知されている中で、商品や企業イメージを再定義して消費者の認識を変えることは、新たな市場開拓にもつながる。

西野金陵は、染料の事業で創業し、やがて琴平で酒造りを始めた。地元の米を使い、金刀比羅宮のお膝元で造られる酒は「こんぴらさんの御神酒」として広く知られている。代表的な銘柄「金陵」はキリっとした辛口が特徴だが、これに対し、一般的な日本酒の製法と少し造り方を変えて生まれたのが「金陵 濃醇純米」だ。通常は、しぼった後などに活性炭で雑味をろ過するが、これだと日本酒本来のうまみや豊潤さがなくなると感じていた醸造責任者が、あえて活性炭を使わない商品を提案。淡い山吹色の酒は、ファンを増やし第二の柱といえる商品に成長した。

また、地元の桃を使ったリキュール、文旦酒、瀬戸内レモネードなど、金陵=日本酒のイメージを変える商品も開発している。
今後、考えているのは「身近なあの飲料を思わせる味」「香りがいい」といった特徴的な商品や、ストーリーのある商品。“誰にでも”ではなく“誰か”にささる商品の開発と同時に、SNSやイベントを通して今まで接点のなかった顧客への発信にも力を入れていく。

金陵の商品にどう関わっていますか。

酒井 醸造責任者として様々な商品開発にも携わってきました。「金陵 濃醇純米」もその一つです。当時、日本酒=透明というイメージは一般の方だけではなく、酒造りに携わる人たちにもあったので、独特の山吹色をした酒に対して社内でも抵抗感はありました。けれど、飲めばすぐに違いが分かるんです。日本酒本来の色や香り、うまみを残した特徴的な商品は、一部のマニアから少しずつ広がっていきました。私もこの味が好きなんです。

前川 私は、開発された商品を広く発信して新しいファンをつくることが主な業務です。私が入社する前は、あまりSNSでの発信に力を入れていなかった印象だったので、そこはこれから力を入れたいと思います。お客様は本当に金陵が好きなファン、日本酒が好きな人、金陵のことをなんとなく知っている程度、いろいろだと思いますが、SNSやイベントなどを通してより興味を持っていただくきっかけを作りたい。あとは、増えているインバウンド需要を取り込む施策も考えていきたいです。

難しいと感じることは。

酒井 酒造りは米や菌が相手なので、同じ品種の米でも毎年コンディションが違います。米の洗い方も吸水方法も、発酵方法も毎年変えなければなりません。人間ではなく菌が酒を造るので、菌が活躍できるような環境を私たちが整えないといけない。それが難しいですが、面白いところでもあります。

前川 洋服なら、サイトに写真があれば見るだけで好きか嫌いか判断できますが、お酒は飲んでいただかないと伝わらない部分もあるのが難しいと感じています。でも、魅力の伝え方は工夫次第でいろいろあると思うので、これから試行錯誤していきたいです。

今後に向けて。

お酒は20歳になってから

お酒は20歳になってから

前川 今、酒造りや宮大工といった伝統的なものづくりが改めて注目されている気がします。実際、酒を仕込んでいる時期にその過程をSNSで発信した際は若い世代からも反応がありました。だから、商品の魅力だけではなくものづくりの面白さや商品の背後にあるストーリーなど、様々な角度からの情報をまずは広く発信していきたいと思います。

酒井 日本酒の人気の味も時代によって変化しており、現在は多様化しています。そんな中で、あらゆる人が支持する商品をつくる時代は終わったのかもしれません。すごく絞り込んだ特徴をもつ商品が開発の方向性ではないでしょうか。酒造りに携わる人間として、今までにない新しい商品を開発したいと思っています。

◆キーワード


パーセプションチェンジ

パーセプションは特定の商品やサービスに対して消費者がどう認識しているかを表す。商品の実態と違う場合も「一般的なイメージ」として定着しているもの。このイメージを再定義して、一般的な認識を変えることをパーセプションチェンジといい、商品がどう認識されているかを理解した上で、新たなターゲットや使用シーンを把握し、そのターゲットに共感してもらう。最終的に新たな顧客、熱烈なファンを獲得することを目指す。

西野金陵株式会社

所在地
本店:仲多度郡琴平町623
化学品事業部:大阪市中央区久太郎町1-6-9
酒類部:高松市亀井町2-8
創業
化学品事業部:1658年・酒類部:1789年
資本金
2700万円
事業内容
染料・化学工業薬品・合成樹脂等の販売・輸出入
清酒醸造、酒類・食料品等の製造・販売
郷土資料館の経営を核とした観光業
社員数
194人
地図
URL
http://www.nishinokinryo.co.jp
確認日
2018.01.04

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