郷土料理に見る素材と 調理方法のマッチング

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸

column

2018.03.15

いろいろなレタスを使ったチシャもみ

いろいろなレタスを使ったチシャもみ

県外から香川県に引っ越してくると、スーパーなどの店頭に並ぶ、「マンバ(ヒャッカ)」「葉ゴボウ」「セレベス」など、他県では見られない野菜の存在に戸惑います。香川県では、地域性のあるこれらの野菜が県内で大量に生産され、市場を経由して県内の隅々にまで供給され、そして日常的に使用されおり、これはとても特殊な環境であると感じます。

これら地域性の強い食材の用途は、例えば、讃岐の郷土野菜の代表格とも言える「マンバ」では、「マンバのけんちゃん(おせっか)」と表現されるように、かなり限定されると認識されています。マンバに限らず、いずれの品目も非常に特徴的な味わいなのですが、その素材を手早く美味しく調理しようとなると、郷土料理として伝承される調理方法が、最も理にかなっていると感じます。

実際マンバについて、いろいろと実験してみましたが、一番手早く、失敗なく、美味しく、飽きずに食べられる料理となると「けんちゃん」を除いては存在しないと感じます。

そして、郷土料理に欠くことのできないもう一つの要素は「味覚」です。レシピは存在しても、食べた経験がなければ、そのレシピが伝承された料理かどうかの判定がつかないのです。

その代表が、20年ほど前までは香川県に存在し、現在は絶滅が示唆されている「チシャ(リーフレタスの一種)」です。チシャを使った郷土料理「チシャもみ(酢みそあえ)」を、同じレシピで、レタスの種類を変えて作ってみましたが、見た目は似ていても、品種が異なるだけで、全く味覚の異なる料理となりました。そして、この時は、チシャもみを食べた経験のある方が口を揃えて表現される「とろけるような食感」には辿り着けませんでした。郷土料理には、レシピだけではなく、主要な素材が欠かせないと強く感じました。

【豆知識】マンバの利用例

さぬきダイニング認定レストラン「時香」での イベントで提供されたマンバロール

さぬきダイニング認定レストラン「時香」での
イベントで提供されたマンバロール

マンバは「おひたし」「スープ」「パスタ」「シフォンケーキ」など、アイデア次第で、驚くほど多様な料理に姿を変えます。一例として、「ロールキャベツ」のキャベツの代わりにマンバを使用すると、キャベツでは出せない、深い味わいのある「マンバロール」が出来上がります。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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