香川から 東京パラリンピックへ

三井住友海上 四国本部 田中 司さん

Interview

2018.04.19

夢を3度あきらめた。今、新たな夢「東京パラリンピック」に、やり投げでの出場を目指している。

小学校から始めた野球で頭角を現し、香川県内有数の強豪校への進学も決まっていた中3の冬。写真を撮ろうと左目でファインダーをのぞくと、景色がぼやけて見えた。診断の結果は、今も治療法が確立されていない「レーベル病」だった。「野球での推薦入学だったので、急に進路を変えなければならなくて。落ち込む暇もありませんでした」

治療のために通い始めた大阪の鍼灸院で、大阪場所に来ていた相撲部屋の親方を紹介されて入門。恵まれた体格を生かして序の口、序二段と番付を上げていった。だが、目の前の取り組み相手も見えづらくなるほど視力が低下し、相撲をやめることになった。

「昔から自分を表現できるのはスポーツだと思っていたので、野球や相撲をあきらめてもスポーツに関わっていたかった」。そんな時、障がい者スポーツ「パラスポーツ」を知る。数ある競技の中から相撲に近い柔道を選ぶが、頭への衝撃が視力に悪影響を与えるという話を聞き、これも断念した。「どれも一度は自分でやると決めたのに・・・。最後まで力を尽くしたかった」

“東京で輝く”ために

講演会では「夢」をテーマに話をする

講演会では「夢」をテーマに話をする

新たな目標を見つけたきっかけは、2013年の東京パラリンピック開催決定。野球の経験を生かし、投てき競技であるやり投げを始め、1年後に当時の日本新記録を出した。

就職活動も始めた。障がい者雇用に理解があり、スポーツ支援にも力を入れ、香川を練習拠点にできる企業を調べた。その中の企業に宛てて、練習すればパラリンピック出場の可能性がある、と自分の紹介状を送った。

熱意が認められ、現在は三井住友海上で社会貢献スポーツ振興担当として、デスクワークや講演活動などを行いながら練習を続けている。「記録が伸びない時期が続くと『何のためにやっているんだろう』と自分を見失うこともあります。でも“東京で輝く”ためには今年1年が勝負。やるしかありません」

自分の役割を果たす

左より 2017年IPCグランプリドバイやり投げ銅メダル 2013年アジアユースパラ砲丸投げ金メダル

左より
2017年IPCグランプリドバイやり投げ銅メダル
2013年アジアユースパラ砲丸投げ金メダル

今年9月、日本パラ陸上選手権が高松で開催される。そこで自己ベスト更新を目指すのはもちろん、今までの大会にないぐらい観客を動員したいと言う。「一人でも多くの人にパラスポーツを知ってもらうこと。それが今の僕の役割だと思っています」

引退後はどう生きるべきかを考えることもある。「これまで本当に多くの人に支えられたから恩返しがしたい。それと、後輩アスリートたちが安心して競技が続けられる環境づくりのために何か役に立ちたい」(石川 恭子)

田中 司 | たなか つかさ

1994年 徳島県生まれ
2010年 式秀部屋に入門
2012年 砲丸投げ・円盤投げを始める
2013年 アジアユースパラ 金メダル獲得
2015年 やり投げを始める
2017年 IPCグランプリドバイ 銅メダル獲得

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