まず、上村松園は女性画家のパイオニアであり、美人画の定型を作った画家です。彼女は浮世絵の美人絵など古今の絵画を参考にしながら、江戸時代の京の文化を描きました。本展出品の《人生の花》は松園が24歳の頃に制作したもので、婚礼に向かう花嫁とその母親が描かれています。花嫁が不安や戸惑いの表情を浮かべてうつむく一方、母親はしっかりと前を見て娘を先導しています。笹紅(ささべに)や青眉(せいび)など、江戸時代から続く化粧は松園がこだわった重要な要素で、京の文化を残したいという思いがこめられています。
この2点に見られる写実性や細密描写、人物の内面表現は京都画壇の特徴です。また、着物の意匠へのこだわりも、染織などの工芸が身近だった京都ならではです。本展では他にも、土田麦僊(つちだ ばくせん)や梶原緋佐子(かじわら ひさこ)、甲斐庄楠音(かいのしょう ただおと)のような、大正期に社会的リアリズムを追求した画家たちや、広田多津(ひろた たつ)、秋野不矩(あきの ふく)といった女性画家、舞妓の画家として知られる林司馬(はやし しめ)や大日躬世子(おおくさ みよこ)など、京の画家たちによる美人画を展示します。描かれたモチーフや表現は多種多様ですが、根幹には京の地で育まれた文化や、受け継がれてきた伝統が流れているのです。
「京都市美術館名品展 京の美人画100年の系譜」
【ところ】高松市美術館(高松市紺屋町10-4)
【入場料】一般1000円、大学生500円、高校生以下無料
※主催=高松市美術館 特別協力=京都市美術館
高松市美術館 橘 美貴
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