やなぎみわ展「神話機械」

高松市美術館 学芸員 毛利 直子

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2019.02.07

《女神と男神が桃の木の下で別れる:川中島》(部分) 2016年 作者蔵

《女神と男神が桃の木の下で別れる:川中島》(部分) 2016年 作者蔵

やなぎみわ(1967年~)は近年、演劇界でも忘れられないシーンを投じてきた現代美術家です。《エレベーターガール》で最初に注目を集め、2009年には第53回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表となる一方、翌10年には本格的に演劇プロジェクトを始めます。特に台湾製のトレーラー車をステージの母体に16年から日本各地を巡回した野外劇『日輪の翼』(原作:中上健次)は、瀬戸内国際芸術祭でも上演されたので、ご覧になり大きな感動に包まれた方もいることでしょう。

さて、10年ぶりのやなぎみわの個展「神話機械」では、《マイ・グランドマザーズ》などこれまでの代表作シリーズや舞台作品を資料や映像によって紹介するほか、16年から福島の果樹園で日本神話と桃をテーマに取り組んできた写真シリーズ《女神と男神が桃の木の下で別れる》を初めて日本で発表します。これは古事記に登場するイザナギとイザナミの物語に由来するもので、生と死の国の境に植えられていた桃の木をモチーフに人間の運命について思考を深める新たなシリーズです。
《My Grandmothers:MINEKO》 2002年 高松市美術館蔵

《My Grandmothers:MINEKO》
2002年 高松市美術館蔵

また、香川高等専門学校をはじめ、全国5校がやなぎに協力し製作されたマシン4機による神話世界も展覧会場に現れます。美術と演劇を往還することで生まれるやなぎ作品は、スペクタクル性とドキュメンタリー性が交差し、虚実を幾重にも越境していくものです。ぜひご来場ください。

やなぎみわ展「神話機械」

【と き】3月24日(日)まで
【ところ】高松市美術館(高松市紺屋町10-4)
【入場料】一般1000円、大学生500円、高校生以下無料

高松市美術館 学芸員 毛利 直子

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高松市美術館 学芸員 毛利 直子

高松市美術館 学芸員 毛利 直子

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