警察組織を離れて分かること

香川県警察本部長 河合 信之さん

Interview

2018.05.17

今年1月、香川県警察本部長に就任。「県警本部で仕事ができるのは、警察官として喜ばしいこと。2度目の高松への赴任ですので、うれしさも2倍です」。2004年から2年間、高松国税局の課税部長を務めた。「当時は高松の商店街が再開発を始めたばかりでした。久しぶりに商店街を歩いて、その活気に驚いています」
休日は料理と読書。最近は俳句に関する本に凝っている。飯田蛇笏(だこつ)の息子で同じく俳人の飯田龍太の句集や、安東次男の俳句の注釈書などを読む。「俳句は潔くて好きです。見よう見まねで詠むこともありますが、人に披露できるようなものではないですね」

海外から日本の警察を見る

香川県警察本部の職員と大窪寺へ

香川県警察本部の職員と大窪寺へ

1987年、警察庁に入庁。約30年にわたって様々な部署を経験してきたが、日本の警察組織を離れた時に、警察官とは何かを考えさせられた。

97年から2年間、アソシエートエキスパートという制度を使って、オーストリア・ウィーンの国連犯罪防止委員会事務局で仕事をした。日本政府が国連に提案した銃器の調査プロジェクトの担当になり、各国に対するアンケート調査を実施。結果をもとに専門家を招いた検討会議を開催した。

「日本では銃器は危険物だから規制するという考えが一般的ですが、国が違えば野生生物から身を守るために必要不可欠というところもあります。子どもが成長した証に銃を贈るという国もあります。一元的に規制すればいいというものではありませんでした」。当時、国際組織犯罪防止条約採択の機運が世界的に高まっていた。河合さんは、条約に付属する文書として、銃器の輸出入を規制する決まりを作るための準備に取り掛かった。

その後、国際刑事警察機構(インターポール)でも仕事をする機会を得て、執行委員と副総裁を務めた。世界各国の警察がメンバーとなっている組織の中では「国によって法律や制度は違うけれど、共通する警察官マインドのようなものを感じましたね。真実の追求と被疑者の人権保障の間でうまくバランスを取るような感覚など、説明抜きで分かり合えるようなところがありました」

「筋金入り」は世界共通

香川県警察学校の卒業式

香川県警察学校の卒業式

県民の期待と信頼に応えられるような考え方や振る舞いを心掛けることが、警察官のあるべき姿だと考える。「『筋金入り』というんでしょうか、それは世界共通の警察官マインドにもつながっている気がします」

香川県警は職員が2千人を超える組織。そのトップとして、大きな責任を感じている。「県民の皆さんの安心・安全をしっかり守るために、職員の活動の安定性・信頼性を確保する、組織運営を無駄なく効率的にする、職員が気持ちよく能力を発揮できる環境をつくることが、私の役目だと思っています」
(鎌田 佳子)

河合 信之 | かわい のぶゆき

1963年 茨城県生まれ
1987年 東京大学法学部 卒業
    警察庁警務局人事課 採用
1997年 警察庁長官官房国際部国際第一課付
    (国際連合犯罪防止刑事司法委員会)
2002年 愛媛県警察本部警務部長
2003年 皇宮警察本部警備部長
2004年 国税庁高松国税局課税部長
2006年 警察庁警備局警備課
    災害対策室長兼警備局調査官
2009年 警察庁刑事局組織犯罪対策部
    国際組織犯罪対策官
2010年 警察大学校組織犯罪対策教養部長
    兼警察庁刑事局組織犯罪対策部付
2013年 警察庁刑事局組織犯罪対策部
    犯罪収益移転防止管理官
    警察庁刑事局組織犯罪対策部
    国際捜査管理官
2015年 関東管区警察局広域調整部長
2017年 中部管区警察局総務監察・広域調整部長
2018年 香川県警察本部長

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