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竹笋生(たけのこしょうず)

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸

column

2018.05.17

5月中旬に出荷される淡竹

5月中旬に出荷される淡竹

季節を表す言葉である七十二候で、5月15日前後は、「竹笋生(たけのこしょうず)」と表されます。「笋」はタケノコのことで、5月15日頃はタケノコが生えてくる季節という解釈となります。

タケノコは、古事記にも登場するほど、日本にはなじみの深い野菜の一つなのですが、現在、タケノコとして流通している孟宗竹は17世紀に日本に入ってきた植物で、日本での利用の歴史はそれほどまで深くはありません。また、孟宗竹のタケノコのピークは4月であり、5月中旬には店頭から姿を消します。では、竹笋生はどのタケノコを指すのでしょうか。

実は、5月15日ごろにピークを迎えるタケノコがあります。それが「淡竹(はちく)」です。孟宗竹のタケノコと比較すると、長さ、太さ、皮の色と見た目は全く異なり、また、ぬかを使わず水で下ゆでするだけであく抜きができ、味覚的にもほのかな甘みを持ちます。
公益財団法人松平公益会が所蔵する江戸時代の博物誌である「高松松平家博物図譜写生画帖菜蔬」には、江戸時代に市井で利用されていた野菜が数多く描写されています。その中にタケノコも描かれているのですが、その標記は「紫笋」となっています。そこには、紫がかった皮や細長さといった淡竹の特徴的な形状が明確に表現されています。

香川県において「竹笋生」の時期に食べられてきたタケノコというのは、実は「淡竹」だったのではないかと感じるとともに、江戸時代の食文化が、現代にも生き続けていることを強く感じます。

【豆知識】タケノコご飯

タケノコご飯

タケノコご飯

タケノコは春限定の食材であり、タケノコのあく抜きをしないと、春を迎えた気がしない方も少なくないかもしれません。数多くの讃岐のご飯料理の中でも、薄い味付けでタケノコの淡い風味を楽しむタケノコご飯は、春の季節溢れる郷土料理です。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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