
敬称は略しますが、書痴として知られた斎藤昌三と交流があり国会図書館の最初の館員で戦後の書誌学を推進した稲村徹元、江戸川乱歩がこの世に一冊だけ残した「貼雑年譜」の完全復刻というこの本の著者に言わせれば夢と狂気の出版を実現させた戸川安宣、日曜研究家発行人の串間努、鈴木清順の映画「ツィゴイネルワイゼン」の音楽監督でもあり、雑本との付き合いを通して何ものにも似ない人になった河内紀、古本界の重鎮八木福次郎など、本好きの人にはたまらないラインナップではないでしょうか。
著者は「いずれも、本を集め、本を調べ、そこで得たことを記録してきた人たちである。本が好きという段階はとっくに通り越して、愛憎入り交じった本との因縁を引きずって生きている人たちである。世間の評価を気にせず、我が道を進むこういった人たちに、私は若い頃から憧れを抱いてきた」と言います。
最近、本の業界は苦境が続いています。この本によれば、たとえば写真集は日本では千部くらいで始めるそうですが、それでやっていけないというのは業界の仕組みがどこかおかしい。社屋代にお金がかかるのか、接待費か、つくる人以外の給料かわからないが構造的な問題があるといいます。
たとえば台湾ではマーケットとしては日本よりずっと小さいけれども、すごくいい写真集が出ている、印刷も製本も日本よりいいし、これは日本の業界の何かが変だという気がしてならないと言います。悲しい現実なのでしょうか。
宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん
- 坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。 - 写真
宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん
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