新しい布製品を手袋の縫製技術で

ウインセス 代表取締役 橋本 勝之さん

Interview

2018.09.20

社内には展示会用に作った巨大手袋や古いミシンが

社内には展示会用に作った巨大手袋や古いミシンが

「私は、あなたの手を愛します」。手袋製造のウインセス株式会社(高松市)が掲げている「お客様への約束」の一つだ。1961年に設立した同社は高度経済成長期の中、工場で使われる作業用手袋の製造に特化。現在も綿やポリエステルといった素材で作った手袋を、電機、自動車、食品、製薬などのメーカーに販売している。
耐熱手袋

耐熱手袋

「約400種類を扱っていて、100℃以上の高温に耐える耐熱手袋、刃物や鋭利な突起物から手を守る耐突き刺し手袋などもありますよ」。これまで様々な工場で多くの人の手を守ってきた。

4代目の橋本勝之さん(46)は手袋で培った縫製技術を生かし、布製品の開発・製造にも力を入れている。
耐突き刺し手袋

耐突き刺し手袋

大学卒業後、イギリス留学と商社での勤務を経て、99年にウインセスに入社。そのころから、先代社長である父の勝成さんが「手袋はもうだめだ」と言うようになった。「父は、中国に工場を作って生産拠点を増やしたバイタリティのある人。長年製造に携わり、時代の移り変わりを見てきた。それだけに限界を感じたのだと思います」

手袋の製造を続けながら、父とともにフォークリフトのバッテリー再生や健康食品の販売など新規事業に次々と挑戦したが「なかなかうまくいかず、何か違うんじゃないかと感じるようになりました」。橋本さんは、ウインセスならではのものづくりを突き詰めたいと考えた。

中国進出から20年間、手袋の製造はほとんど中国の工場でおこない、日本の本社ではサンプルを作る程度だった。2010年に社長に就任すると、本社でも製造できるように縫製工の育成に取り組んだ。「一から育てるのは大変なことでした。社内で手先の器用そうな人に声をかけて、少しずつ増やして。今6人が縫製をしてくれています」

今後、東南アジアにも工場を進出する予定だ。3拠点で製造をおこない、海外の工場では大量生産するもの、日本では顧客の要望に応えた小ロットのものや、新しい商品を作っていく。

「お客様が『これが欲しかった』というものを作りたい」。ニーズに合わせて、手袋以外の工場用製品も作る。アームカバーやエプロンなど、特にクリーンルームで使われるものの受注が増えている。顧客からは同じような布製品に見えても、手袋の縫製技術とは全く異なり、作るのは簡単ではないという。それでも「布製品ならウインセスに言えば何とかなる。そう思われる会社にしたいですね」
縫製が難しい薄い素材で作ったポーチ「zero」

縫製が難しい薄い素材で作ったポーチ「zero」

今年は個人向けの商品も展開。プロダクトデザイナーの協力を得て、薄くて軽いポーチ「zero」を作った。薄い布の縫製は難しく、ウインセスならではの強みだ。新商品はウインセスの技術を多くの人に知ってもらうきっかけになる。橋本さんは、工業製品やギフトなどの展示会に積極的に参加している。

鎌田佳子

橋本 勝之 | はしもと かつゆき

1972年 東かがわ市生まれ
1990年 三本松高校 卒業
1994年 福山大学 卒業
    イギリス留学、商社での勤務を経て
1999年 ウインセス株式会社 入社
2010年 代表取締役 就任

ウインセス株式会社

住所
高松市香南町横井464-1
TEL:087-879-0880
従業員数
30人
事業内容
作業手袋、クリーングローブ、クリーンウェア、オリジナル機械カバーの製作など
地図
URL
http://www.wincess.co.jp/
確認日
2018.09.20

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