
生活様式の変化とグローバル化

「今の生活様式にあった商品を作っています」と株式会社モリシゲの取締役で商品開発部長の山崎恒人さんは話す。生活様式の変化。これを象徴する一つの例が食卓、ダイニングテーブルだ。以前は、85センチから95センチだった食卓の幅が、現在では75センチから85センチが主流となっている。10センチ以上も小さくなっているのだ。背景には核家族化によるマンションでの生活、そして食生活の変化がある。こうした社会背景に加えて、日本の家具メーカーを取り巻く環境も大きく変わったと山崎さんは言う。以前は、本場の洋式に近づこうと業界が競って海外のデザインを取り入れてきたが、今では世界的にもこの洋式スタイルが当たり前、飽和状態になってしまった。この中で日本製品がどうあるべきかが問われているというのだ。
ライフスタイルに合わせて変えるべきものと守るべきもの

漆は紫外線に弱く、適度な湿度が必要だ。サンルームがあったり、冷暖房が効いている現代の住宅では、その取り扱いが難しくなる。このため販売の時に、漆の特性や扱い方を説明するなど消費者への啓蒙を行っている。また、製作側も取り扱いやすく、現在のライフスタイルにあったデザインにするなどの工夫も行っている。当然ながら漆塗りの家具は全て手作業で作られる。自然、収益面での問題がある。それでも漆家具を作り続ける理由について山崎さんは、「伝統を守っていくということともう一つ、家具の要素として美術的なもの、美しいものが必要だと思うんです。そのために伝統工芸を取り入れて『魅せる家具』も目指しているんです」と話す。さらに、「心にゆとりを持ち、生活に楽しさを感じてもらいたいですね」と加えた。この言葉がモリシゲのこだわりを的確に言い表しているように思えた。このこだわりが別の形でも現れている。
オーダーメイドの家具の注文が増えているというのだ。特にテレビキャビネットなどリビング周りの家具のオーダーメイドが増え、今ではキャビネット類の50%以上を占めている。山崎さんは、大量生産の商品が溢れ、家具にかけるコストが下がっている反面、他にない自分のもの、自分オリジナルといった消費者のこだわりが増していると感じるという。そして消費者がモリシゲを選ぶのは、漆家具と洋式家具を扱っているという理由からだそうだ。
品質、デザインでブランド力を高める
この解決方法として山崎さんは「ブランド力」を強調する。全ての商品が国内生産で、品質、デザインが優れていることをPRし、モリシゲブランドを高めていくことだ。具体的には、漆塗りの技術を他の家具の塗装にも生かし、色、つやはもとより、冷暖房の温度変化に対応できる仕上げを行う。また、椅子などは独自の強度基準を設けている。そして最大の問題でもある価格面については、「値段は変えない。しかし、品質は上げる」。これによって実質的な値下げをするのだそうだ。山崎さんは「使ってもらう以上、いいものを提供するのがメーカーの責任です」と語る。
こうしたこだわりが国際的にも認められ始めている。世界最大規模の家具の見本市「ケルン国際家具見本市」などで高い評価を受け、ロシアや台湾、中国への販売ルートができつつあるのだ。「2010年は日本製品、モリシゲ商品の価値が世界で問われる年です」と山崎さんは語った。大きな流れに流されず、信念を持って踏みとどまり挑戦し続ける力。これがモリシゲの目指す「ブランド力」なのかもしれない。
山﨑 恒人
株式会社モリシゲ
- 住所
- 香川県高松市上福岡町字深田855
- 代表電話番号
- 087-861-0281
- 設立
- 1944年
- 社員数
- 135人
- 事業内容
- 家具の製造および販売、特別注文の家具の設計および販売
- 資本金
- 4100万円
- 地図
- URL
- http://www.morishige-furniture.co.jp/
- 確認日
- 2010.01.21
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