ハイリスクな研究開発は本業との軋轢も招いた。信頼していた社員の一部も辞めた。景気の変動に何度も振り回された。
幸運は、苦しみぬいたとき訪れた。開発のヒントが、お金が、人が、注文が・・・40年かかって会社は上昇気流に乗った。代表取締役社長 長峰 勝さんは地球資源の有効活用や人類の健康に役立つ技術を求める「ミクロな世界」の探検家だ。
セラミックスのマイクロ化
「ほとんどの物質はミクロの境界を超えると、とんでもない機能に変貌します」。長峰さんは、ミクロの技術開発を探検になぞらえる。
1980年代、セラミックブームで多くの大企業が開発を進めた。需要が伸びず大手が撤退した。ユーザーへの補給がストップした。市場に穴が開いたのだ。チャンスだ。香川県産業技術センターの指導で、マイクロセラミックスの開発を始めていた長峰さんは、1996年「ミクロ探検隊」を編成して本格的に乗り出した。
「何度も挫折しました。遭難の危機です。信頼していた隊員が次々脱落しました」。しかし培ってきた技術で1997年「マウンターノズル」の開発に成功した。弾みがついた。2000年には「電子部品検査用ノズル」が第8回芦原科学功労賞を受賞した。
※ (マイクロセラミックス)
セラミックス製の米粒ほどの大きさのモーターやポンプ、センサー、それらを組みこんだ機械。
※ (マウンターノズル)
基板やボード上に電子部品を自動設置するパイプ状の部品。
※ (芦原科学功労賞)
高松市出身の故芦原義重氏(名誉県民)の寄付金を基金として創設、自然科学分野で優れた研究成果を挙げた研究者・グループを表彰する。
大手の撤退は開発のチャンス!
もう一つの主力商品「ハニカム触媒」は、車の排気ガスをクリーンにする触媒だ。去年12月に部分開通した、地下30メートルの首都高速中央環状線で使われている。どこにも真似できない数ミクロンの金型技術と、香川県工業技術センター指導のセラミック材料技術との融合で開発できたものだ。触媒事業の「技術と設備と市場」は撤退した大手から譲ってもらった。「先方の工場設備一式を解体してこちらに移しましたが、触媒化学の基礎知識は大手OB技術者から、設備は友人の建設会社社長の協力で移転できました」。長峰さんの信念が製品化を呼び込んだ。2003年ハニカム触媒は2度目の芦原科学功労賞(第11回)を受賞した。
※ (ハニカム触媒)
蜂の巣形構造の触媒。 英語「蜂の巣」の意味で名付けられた。
10年先の巨大市場がターゲット
セラミック、金属、触媒などを融合した『マイクロマシン』の開発が実現すれば、地球資源の有効利用や人類の健康に寄与できそうだ。
「熟練工でなければ出来ない高度な技能をシステムにしたものです」。事もなげに語る長峰さんだが、ヴィジョンと目標はとてつもなくでっかい。
※ (マイクロピアスアレイの製法開発)
少数穴でφ10μm(1/100ミリ)クラスは職人技で可能だったが、φ1μm(1/1000ミリ)は不可能だった。半導体製造装置や膜分離分野などで高性能微細穴のネット状部材の要求が増えている。
※ (マイクロマシン)
構成部品のサイズが数ミリメートル以下の微小なシステム。
聞きとり、ひらめく!
「学会、専門誌などへ積極的に関わって、先端分野の研究者と交流します。『聞きとり、ひらめく』能力があればアイデアは出てきます」。新しいものには教科書も研究書もない。「発想・苦悩を伴う展開・創造」。そのときめきは画家や詩人や音楽家と同じだ。
家族経営
「子どもの頃、家の1階が工場、2階が住いで、仕事をしているオヤジの背中を見ながら育ちました」。長男で専務の考志さんは、子どもの頃から後を継ごうと思っていた。
「身内はプレッシャーを感じながら仕事に取り組まないと。逆に社員に仕事ぶりを見てもらうという気持ちです」…考志さんは、社員に厳しい目で見られることが励みになると言う。
長峰 勝
株式会社 長峰製作所
- 住所
- 香川県仲多度郡まんのう町岸上1725-26
- 代表電話番号
- 0877-75-0007
- 設立
- 1968年
- 社員数
- 90人
- 沿革
- 1911年 1月 大阪市で故長峰松之助が木型工場として設立
1942年 4月 香川県仲多度郡満濃町四条に移転
1968年 11月 有限会社長峰製作所設立
1981年 7月 株式会社長峰製作所に組織変更
1985年 4月 現在地に工場新築移転 - 事業内容
- ・金型の設計、加工、組立
・精密セラミックス製品の製造、販売
・ハニカム触媒・吸収剤の製造、販売
・特殊プレス部品の製造、販売 - 資本金
- 1億円
- 地図
- URL
- http://www.nagamine-manu.co.jp
- 確認日
- 2022.05.05
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