
小型部品の組み立てなど、左右の腕で別の作業が可能な協働型ロボット「YuMi」とグータッチする乾さん=高松市寿町の大豊産業本社
“困りごと”を技術で解決
「提案力と創造力を備えた『総合技術商社』を目指していきたいと思っています」
守備範囲は多岐にわたる。1949年、乾さんの祖父が、四国電力グループを主要取引先に、電気機材の卸売業として創業。プラント工場や横河電機など大手の取引先を開拓し、商社としての礎をつくった。
電力自由化に危機感を抱いた2代目の父は、電力分野以外の販路を模索した。制御・計測機器の販売やメンテナンス、太陽光発電などの新エネルギーの他、人手不足の解消や省力化・自動化をテーマに、ロボット、カメラ、AI技術などを駆使したIoT関連に注目するなど事業を拡げた。
「いまの我が社の大きな強みは、様々な特徴を持つグループ会社の存在です」
制御機器を製造・販売する新立電機(山口県)。電力・交通・プラントなど様々な分野の製品を製造・販売する土井製作所(東京都)。太陽光発電の発電効率を上げるブースターなど産業用電気機器の販売・エンジニアリングを行う大豊G&N(東京都)。産業用機械を設計・製作するヤザック(神奈川県)とは、ロボット・IoT 事業での協業を進めている。
「祖父が創業した大豊産業はグループ会社5社を含め従業員 400人、売上150億円まで成長した。将来、グループ会社間での協業をさらに進め、売上300億円を目指していきたい」と、乾さんは決意を語る。
「突然、社長になりました」

「社員の幸せが一番」。軸は絶対にぶれない
大学院でビジネスを学ぶため 15年に帰国。修了後、33歳で大豊産業に入った。6~7年かけて、社長業のノウハウや人脈を先代の父から引き継ぐ予定だった。しかし……
「突然、社長になりました」
今年1月、乾さんはSNSでこうつぶやいた。昨年12月、父が 70歳で急逝した。「2カ月前の健康診断では全く問題なく、前日もとても元気だったんですが……」
厳しくて頑固。怒鳴られることも多く、「父のことは、正直嫌いだった」と打ち明ける。昔ながらの社長でトップダウン。「こっちに舵を切るんだ」と強引なところもあった。でも、「会社がよりよく変わるためにはめちゃめちゃ前向きだった。売上よりも利益よりも、何より『社員の幸せ』を一番に考える人でした」
父が亡くなってもうすぐ1年になる。良くも悪くも、まだまだ“父の会社”だと乾さんは話すが、「いいところは引き継ぎながら、少しずつ自分の“色”を出していきたい。みんなの意見を吸い上げられる、フラットな組織にしたいと思っています」。そして、こう断言する。
「もちろんこれからも、父が大切にした『社員の幸せが一番』という軸は絶対にぶれることはありません」
「次に生かす」営業力

制御機器などを保守点検するエンジニア
技術力がウリの大豊産業だが、乾さんは「営業力」にも自信を持つ。取り入れているユニークな研修がある。
「お客さんに“心を開いてもらう”研修です」
『聞く』『提案する』『話をまとめる』の3つで構成するもので、「こちらから一方的に『こんな商品があるんです』と話すのではなく、まずはお客さんから丁寧にニーズを聞き取ります。決してその場で終わらせず、 “次”に生かせるよう、話を必ずクロージングさせる。そこまでもっていくのが肝心です」。定期的に外部から講師を招き、営業担当者は全員参加。研修で鍛えた営業力で、取引に繋げた案件は少なくない。
創業者の祖父、事業を拡大させた父を見て育った。3代目の若きリーダーが見据えているのは大豊産業のさらなる成長だ。
「“困りごと”があるところに私たちの市場はあります。一度しかないせっかくの人生、地元・四国を拠点とし、全国、そして世界に貢献できる会社にしていきたいですね」
乾 和行|いぬい かずゆき
- 略歴
- 1984年 高松市出身
2003年 大手前高松高等学校 卒業
2008年 明治大学経営学部 卒業
丸紅泰国株式会社 入社
2017年 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修了
大豊産業株式会社 入社
2019年 代表取締役社長
大豊産業株式会社
- 住所
- 香川県高松市寿町1丁目1番12号パシフィックシティ高松ビル9階
- 代表電話番号
- 087-811-4567
- 設立
- 1949年
- 社員数
- 233人
- 事業内容
- 制御機器/電気・電子測定機器等の販売・保守/
電気機器・資材/土木機器・資材の販売・設計・工事・保守/
新エネルギー関連機器の販売・保守/
ロボットシステムの販売・設計・工事・保守/他 - グループ
- 光映電工株式会社
新立電機株式会社
株式会社土井製作所
日本治具株式会社 - 地図
- URL
- http://www.taihos.co.jp/
- 確認日
- 2021.09.03
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