都会でサラリーマン生活を送る中、いずれは地方で起業したいとの思いがあった。「地方では旅行業や観光業がこれから伸びていく数少ない分野だろうと漠然と思っていました」
高校まで高松で過ごし、ハンドボールに明け暮れる少年時代だった。東京の大学に進学。スポーツ経営学を学び、卒業後はスポーツウェアメーカーに就職した。7年半勤め、インターネット関連のベンチャー企業に転職。そこで4年半働き、香川に帰ってきた。
出発前、書籍などの紙媒体の情報をあえて目にしなかった。インターネットを使った事業にしたいとの考えもあったからだ。「ネットの情報だけでお遍路ができるか試したかった。でも、ここを見れば全てが分かるというようなサイトがなくて。必死に探し回らないといけないということがよく分かりました」
その経験が現在運営するウェブサイトに生かされている。美しい景色や地元の人たちとの触れ合いといった楽しいことばかりでなく、険しい道を乗り越えることもお遍路の魅力だと思えた。遍路を終えて、本格的に起業の準備を始めた。国内旅行業務取扱管理者の資格を取り、会社は旅行業として登録。2つのウェブサイトを立ち上げた。
情報サイト「四国遍路」は、佐藤さんが歩き遍路をした際に知りたいと思ったことを中心に紹介している。「道中、何を食べればいいか、どこに泊まればいいか、歩く時に気を付けた方がいいことなど実践的な情報を意識して載せています」
ゲストハウス経営者、自転車店経営者、日本の聖地研究者にも記事の執筆を依頼している。「しっかりとしたストーリーがあれば観光資源になります。そういう意味では四国には資源がいくらでもある。それをどうやってコンテンツに仕立てていくかですね」
もう1つが宿泊予約サイト「お遍路さん家」だ。現在、香川と愛媛の10施設を掲載。少しずつでも自信を持って紹介できる宿を増やしていきたいと言う。1番札所から88番札所まで、四国中のお遍路に便利な宿泊施設をカバーすることが理想だ。
「宿が確保できること、初心者でも回れるという情報をきちんと提供すれば、お遍路をする人はもっと増えると思います」。ターゲットはお遍路初心者や若者。今後は外国語対応も視野に入れている。
「地方にもビジネスチャンスはたくさんある。行政の支援も受けやすく、何より自分のオリジナリティーや存在感を打ち出しやすいと思います」。まずは2つのサイトから四国遍路という会社を知ってもらい、ツアーなどサービスの提供につなげていく。
「お遍路そのものをアドベンチャーと捉えて、四国の自然を楽しむような旅行プランを提案したい。新しいお遍路のスタイルができれば、これまでとは違う層の人たちも四国にやって来ると思います」
副編集長 鎌田 佳子
佐藤 崇裕 | さとう たかひろ
- 1980年 4月 高松市生まれ
2003年 3月 早稲田大学 卒業
2016年 1月 株式会社四国遍路 設立
代表取締役 就任
- 写真
株式会社四国遍路
- 住所
- 三木町大字池戸191番地
087-899-6737 - 事業の概要
- 四国地域・お遍路に特化した旅行サービス
- 資本金
- 800万円
- 認定・採択
- 香川県「平成27年度香川県移住者起業支援補助金」対象者採択
四国経済産業局・四国運輸局「平成28年度地域資源活用事業」認定
かがわ産業支援財団「平成28年度かがわ中小企業応援ファンド事業」採択 - 地図
- URL
- http://www.shikokuhenro.co.jp/
- 確認日
- 2018.01.04
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