瀬戸内は どんな場所よりも面白い

瀬戸内人 代表取締役 小西 智都子さん

Interview

2016.03.03

「香川県の半分は島と海でできている」。2009年12月に発行された『せとうち暮らし』創刊号の冒頭に書かれている言葉だ。「これがまず言いたかったことなんです。香川には島も海もあるよって。県民の25人に1人は島民ですから」

初代編集長の小西智都子さん(43)は、フリーランスで編集やデザインの仕事をしていた時に香川県から事業を委託され、移住促進のための啓発冊子を制作した。それがせとうち暮らしの始まりだった。「タイトルは、かがわ暮らしじゃなくて、せとうち暮らしだよねって、誰ともなく自然に決まったんですよ」

事業終了後も冊子の制作を続けたいと、ルーツブックスという出版社を設立。小冊子から雑誌へと形を変え、春・夏・秋の年3回発行で現在17号を数えるまでになった。

「私、島オタなんですよ」と笑う。けれど、もともと香川や瀬戸内の島々に、興味があるわけではなかった。高松市出身で、欲しい洋服や雑貨など香川には無いものばかりだと感じ、都会に憧れて育った。

関西の大学に進学したが、卒業間近に阪神淡路大震災に遭い、帰郷。「お金を貯めて、また都会に出るんだ」。そう思っていた。ところが、多くの人との出会いが小西さんを「島オタ」へと変えていく。

帰郷後、高松市女性センターの職員や、生活情報紙の編集者、商店街のまちづくりチームのスタッフなどを経験し、「香川にもこんなに面白い人達がいるんだ」と驚きの連続だった。海や島に興味を持ったのは、せとうち暮らしの制作がきっかけだ。創刊号の取材で訪れた女木島で、カルチャーショックを受けた。

「高松は不夜城みたいで、夜すごくきれい。子どもの頃、みんなあれに憧れたんだよ」。島の人からそう教えてもらった。砂浜で星空を見ていてお腹がすいたら、自分の船に乗って高松まで出掛けてラーメンを食べる。そんな女木島の人たちの生活も初めて知った。「それから島にはまりました。島側から見ると、いろんな可能性や楽しみ方があったんだ、今まで知らなかったのはもったいないって悔しくなりました」
出版社を設立したのは、香川や瀬戸内をもっと広く知ってほしい、ここから全国へ発信したいとの思いがあったからだ。せとうち暮らしは、ルーツブックスの発行となった6号から雑誌として販売を始めた。最初は書店を回っても、取り扱いは断られるばかり。知人が営むカフェや雑貨店に置いてもらうことから始めた。

リトルプレス(個人が手掛ける出版物)やブックカフェの流行が販路拡大を後押した。徐々に読者は増え、ニーズの高まりとともに、書店でも販売出来るようになった。瀬戸内の島々をもっと知りたいという読者の要望と、県の垣根を越えたいという小西さんの思いもあって、12号からは取材エリアを瀬戸内海全域に拡大した。

昨年4月には、活動に賛同した小豆島の会社と共同で、株式会社瀬戸内人を立ち上げた。小西さんは代表に就任し、編集長は後任に任せたが、今も月のうち多くは島で過ごし、原稿も書く。

瀬戸内人には出版部と事業部を設けた。せとうち暮らしの発行に加えて、新たな事業も展開していく。紙媒体だけでなく、動画やインターネットでの情報発信も準備中。船で巡る島ツアーも企画中だ。「瀬戸内は宝の山。こんなに面白いところは他にない。間違いなく、これからもっと面白くなりますよ」。小西さんは、力強くそう言った。

小西 智都子 | こにし ちづこ

1972年7月 高松市生まれ
1995年3月 関西学院大学 卒業
2010年5月 ROOTS BOOKS(ルーツブックス) 設立
2015年4月 株式会社 瀬戸内人 設立
写真
小西 智都子 | こにし ちづこ

株式会社瀬戸内人

住所
高松市扇町2-6-5 YB07・TERRSA大坂4F
TEL:087-823-0099
確認日
2016.03.03

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