
同社が手掛けるベアリング部品
業績は順調だが、「市場の変化に備えて体制を整える必要を感じています。実際に変化が訪れるのを待っていてはダメ。予測に基づく攻めの姿勢が重要」と山城直胤代表取締役社長。海外のベアリングメーカーが地産地消に移行しつつあり、今後はエンジン車からEV車への切り替えも進んでいく中で、今後を見すえた新しい基盤づくりに着手している。
まずは、ものづくりの省力化・省人化。同社は早くからロボットを導入し、120台以上の自動プレス設備や画像検査装置、1基最大1万2000ケースのコンテナが収容できる自動ラック3基などが既に稼働中。自動ラックの収納品はすべてバーコードで管理され、ボタンを押せば約1分で必要なものを「先入れ先出し」してくれる。さらに現在の人員体制でも生産規模を拡大できるよう、重労働分野を中心に設備の充実を検討しているほか、より高度な画像検査装置の開発にも取り組んでいる。金型のメンテナンスなどは今も熟練の職人たちに頼る部分が大きいが、3Dスキャンと機械加工を駆使して職人技の精度に近づけるデジタル化も視野に入れて、ノウハウを蓄積しているところだ。
こうした設備投資を支えるのは、資本力。これまでほとんど営業活動をしてこなかった同社だが、「営業をしなくても経営が安定していたのは、一気に飛躍しようとせず、年数%ずつ身の丈に合った成長を目指してきたからです。しかし大きな変化を前にした今は、積極的な拡販が不可欠」という山城社長の下、公式サイトをリニューアルし、ものづくり系のマッチングサイトを通じた顧客獲得にも乗り出した。既に公式サイトを通じた問い合わせや取引先からの紹介で、販路拡大に一定の手応えを感じているという。
省人化と設備投資で現場の負担を軽減する一方、SDGsの理念に沿った社内環境整備も進めている。品質や生産を向上する鍵は「安全」とする同社では、安全・安心な職場づくりを目指す工場教育を徹底。工場の屋根に設置した太陽光発電システムは、自社で消費する電力の3割程度をまかなえる規模だ。
「自分たちにできることからコツコツ取り組んで、さまざまな角度から将来の変化に対応できる体制を整えたい」と山城社長。創業60余年を経て迎えた大きな転換期を、冷静なまなざしで乗り越えようとしている。

自社の太陽光発電設備と、自動化が進む製造設備
戸塚 愛野
山城金属株式会社
- 住所
- 香川県丸亀市綾歌町岡田上1785
- 代表電話番号
- 0877-86-3135
- 設立
- 1961年12月
- 社員数
- 本社工場 31名 満濃工場 119名 計 150名(2023年9月現在)
- 事業内容
- 金属プレス加工製品の製造
メカニカルシール用部品、エアーバッグ用小物部品、ベアリング用シールド、オイルシール用芯金、ベアリングシール用芯金、精密プレス加工部品他 - 地図
- URL
- https://www.yama-shiro.co.jp/
- 確認日
- 2024.05.16
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