“思い”も包む新しい封筒で 「ハレの日」を演出

株式会社AIRみらい 代表取締役 勝田 照望さん

Interview

2013.08.01

アンティーク調のフレームに収まる、カラフルな花や水引などのモチーフ。一見、封筒とは分からない。AIRみらいの勝田照望さん(39)が、製作・販売している「ハレの日封筒」だ。贈り主の気持ちをも包む、特別な封筒を作りたいと思った。

きっかけは、父の死。末期の肺ガンだった。「『大事なものは目に見えないことが多いよ』と、教えてくれていましたね」。写真家だった父の生き様を振り返って、葬儀で手紙を読んだ。「父を誇りに思う」。生きているときになぜ言えなかったのかと悔やんだ。

気持ちを手紙にすれば、素直に伝えられるのではないか。そこで考えたのが、手紙を入れるための、これまでにない封筒。どんな場面にふさわしいかを想像した時、結婚式であれば多くの人に使ってもらえると思った。そして「ハレの日封筒」が完成した。「新婦が読む両親への手紙。その場面をもっと美しく演出したいと思っています」

素材は布を選んだ。手紙を贈る人と贈られた人、その絆が糸をつむぐように深まればとの思いからだ。既製品は5000円、オーダーメードは1万円から販売している。装飾も花や水引、リボン、レースなどさまざま。封筒を飾れるよう、フレームも作った。

勝田さんがこれまでで一番うれしかった贈り物は、2人の娘からもらった手紙と指輪。自分の誕生日も「ハレの日」だと思えた。「米寿を迎えるおばあさんのために、また、自分のために封筒を作るお客様もいました。それぞれの『ハレの日』に使ってほしい」
勝田さんのものづくりの原点は、高校卒業後に就職した企業にある。高校3年の夏、地元の岡山から、香川で暮らす兄の元へ遊びに行った。そのときのアルバイト経験が「仕事って楽しい、早く自立したい」という気持ちを芽生えさせた。職業安定所に通い、親にも内緒で、高松の鋳造用原材料や副資材を扱う会社に就職を決めた。鋳物やガラス、いろいろな「もの」の原料に触れる経験は貴重だった。

結婚・出産を経験し27歳で再就職、30歳で離婚。その後、縁あって大阪にある建築関係の企業へ。仕事を通して空間をマネジメントする感覚をつかんだ。3年間、引っ越しはせず高松から通勤する生活を続けた。娘のため環境を変えたくないと考えたからだ。ハードな生活に追い打ちをかけるように、思いもよらなかった父の死。「後悔しないように生きなければ」。独立を決意した。

2010年に会社を設立。これから先、air(空気)のように必要とされる存在でありたいと、社名を「AIRみらい」に。応援の意味を込めてyellと同じく、読み方を「エール」とした。

11年にはセレクトショップ「AIR MIRAIコネクト」をオープン。オリジナル商品は封筒と、リボンを使った花形の装飾品「おひさまロゼット」。そのほか、アロマや食器、革製品など自身が厳選した品を扱う。「作り手とつながる場」という意味で「コネクト」を付けた。

封筒のオーダーメードは、打ち合わせから完成まで約1カ月。依頼主の思いをじっくりと聞いてから製作を始める。希望すれば手作りも可能だ。「多くの人に温かい思いを伝えたい。また、そのきっかけになれば」との気持ちで、現在、大阪・神戸・京都・首都圏のホテルやゲストハウス、ドレスショップ、ブライダル業界を中心に販路を拡大している。

勝田さんが発信したエールが、人から人へ贈られる。「ありがとう」の連鎖がつながり始めた。

勝田 照望 | かつた てるみ

1973年10月1日 岡山生まれ
2010年3月 株式会社AIRみらい 設立
2011年3月 セレクトショップ「AIR MIRAIコネクト」オープン
2013年3月 "ハレの日封筒プロジェクト"
      かがわ産業支援財団:創業ベンチャー・地域密着型ビジネス支援事業 認定
      中小企業基盤整備機構近畿:販路開拓コーディネート事業 認定
写真
勝田 照望 | かつた てるみ

株式会社AIRみらい

所在地
高松市松縄町1133-8 スプリームビル103
TEL
087-865-1545
資本金
500万円
社員
5名(パートを含む)
事業内容
家具、食器、雑貨、インテリアなど商品の企画・製造・販売
確認日
2018.01.04

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