香川の昭和100年を振り返る【文化】

ビジネス香川 編集室

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2025.01.30

香川漆器

香川漆器

「面積が狭く、森林などの資源も多くはない中で、今あるものを活かしながら先人たちが技術と工夫で素晴らしいものを生み出してきたのが香川の特徴だと感じます」と話すのは、屋島山上交流拠点施設「やしまーる」館長・中條亜希子さん。中條さんは、以前所属していた高松市歴史資料館で、高松市の市政施行130年を写真で振り返る企画や、アートの視点で香川を紹介する企画などを手掛けてきた。

香川はもともと手仕事が盛んで、国の伝統的工芸品になっている香川漆器と丸亀うちわに加え、県独自に制度を設けて37品目を伝統的工芸品に指定(2023年度末)している。また、日本の工芸品を世界へ発信するために工芸品の職人を育てる必要がある、という考えをもつ納富介次郎が初代校長となった香川県工芸学校(現・香川県立高松工芸高校)の存在も特徴的だ。

ものづくりの素地があった香川は「県内外からやってきた“一流”に触れることで、さらに地域の技術や発想力が磨かれていった」と中條さんはいう。例えば、1950年から金子正則氏が知事を務めた時代は、戦禍に見舞われた街を復興する際にデザインの視点を取り入れ、一流の建築家やアーティストが香川に関わった。世界的な彫刻家のイサム・ノグチや流政之も制作拠点を構え、地元の石工たちの高い技術が作品づくりを支えた。

受け継がれた文化に新たな魅力を加えて

デザインや芸術を活かした地域づくりは、現在の「瀬戸内国際芸術祭」にもつながる。地域活性化、観光振興を目指して開催された瀬戸内国際芸術祭は、一流のアートを瀬戸内海の島々に置くことで、訪れた人々が美しい自然や受け継がれてきた風習・祭り・文化という魅力を知ることになった。

伝統工芸品の世界では、後継者不足や高齢化が課題となっているが、新たな動きもある。伝統工芸品を現代の生活になじむようにリデザインする動きが全国的に起こり、香川でも受け継がれてきた手仕事に新たな魅力を加える動きが進む。女性の伝統工芸士も生まれている。

産業だけではなく文化も香川を支える重要な要素。新たな文化は、これまでの積み重ねの上に生まれる。今あるものを技と工夫で磨き、文化をつくってきた先人たちからの財産に、私たちはどんな魅力を加え次世代につなぐことができるだろう。
庵治石をリデザイン

庵治石をリデザイン

【取材協力】香川県経営支援課、交通政策課、産業政策課、政策課、統計調査課、やしまーる館長・中條亜希子さん

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