独自の技術やノウハウを
複数の商品や市場に応用

セトラスホールディングス

Tec✕Tec

2025.09.15

左:マグミット製薬 研究開発本部研究部 評価課 黒森 稜弥さん(高松第一高校出身) 右:協和化学工業 テクニカルセンター 技術サポート課 石川 洸さん(高知高専出身)

左:マグミット製薬 研究開発本部研究部 評価課 黒森 稜弥さん(高松第一高校出身)
右:協和化学工業 テクニカルセンター 技術サポート課 石川 洸さん(高知高専出身)

企業が成長し続けるためには、独自の技術やノウハウを複数の商品や市場に応用できることが重要だ。セトラスホールディングスは、マグネシウム化合物および世界で初めて工業化に成功したハイドロタルサイトなどで知られる協和化学工業の組織再編により設立された。協和化学工業では、瀬戸内海の海水中のマグネシウム成分を原料とし、工業、医薬など様々な用途で製品を開発・販売してきた。

例えば、同社の製品である水酸化マグネシウムは、難燃剤の材料として広く利用されている。難燃剤は、プラスチックや繊維などの燃えやすい素材に添加して火災発生を遅らせたり、火が広がるのを抑えたりする役割があり、海水から生まれた同社の製品は燃えても有害な物質が出ない、環境に優しい点が特長だ。

酸化マグネシウムは、制酸作用や緩下作用があるため胃薬や便秘薬としても活用されている。グループ企業の一つであるマグミット製薬は、一般用医薬品の便秘薬「マグミット®K」の製造から包装まで手掛け、「豊かで健康な生活」をキーワードに新薬の開発にも取り組んでいる。

この研究開発力を活かして、今後は化学工業・医薬分野の軸をさらに広げ農業、食・健康、電子材料などの分野での製品開発にも挑戦。アグリバイオ事業のほか、自給率向上やフードロス低減といった地域の課題に取り組むフード事業も展開している。2026年には坂出に研究施設となる「イノベーションセンター」を竣工予定。ここでは、大学や研究機関、他企業と連携したオープンイノベーションを推進し新たな価値創造を目指す。

業務について教えてください。

石川 開発品を評価する業務に携わっています。水酸化マグネシウムや合成ハイドロタルサイトを実際に樹脂に混ぜ、どれくらい燃えにくくなるか、どのくらい樹脂の劣化を抑制できるかといった性能を試験・評価しています。顧客から「こういう機能がほしい」という依頼もあれば、市場でどんな機能が求められているかを踏まえた上で試験を行う場合もあり、結果によって新たな用途開発につながる可能性もあります。

黒森 新薬だけでなく、ヒトが体内へ取り入れる全てのヘルスケア製品の開発において、これらが体内でどのように吸収、分布、代謝および排泄されるかという過程を、細胞や動物を用いて推測する「体内動態研究」を担当しています。研究対象が、ヘルスケア製品として開発可能か否かを見極める重要な評価です。職場は岡山大学の敷地内にあるため、大学が保有する最先端の機器を使い、大学の先生のご指導もいただきつつ、新しい発見にワクワクしながら研究しています。また、社外の環境に身をおいていることから、多様な考えを持った方々と交流ができ、社会人として大きく成長できると考えています。

難しいところは。

黒森 手順通り研究を進めることも重要ですが、目的は何か、その目的を達成するために妥当な方法なのか、機械が出した数値を単に解析するだけでなく、そこに潜む生理機能は何かなどを考えなければなりません。そして、次に解明しなければならない課題に応える研究計画を立てる必要も出てきます。そのためには情報収集が必須です。

でも考えるのは楽しいです。上司や先輩と相談すると、自分のやるべきことがたくさんみえてきます。もっとこうした方がいいのではと興味をもって取り組むようにしています。今までにない新しいモノが生み出せるかもしれないと考えると、やりがいを感じます。

石川 例えば、燃えにくさを追求すると強度が落ちる場合もあって……。複数の機能をバランスよく実現するのは難しいです。評価の結果を研究開発部門に伝えて研究が進めばまた評価して、の繰り返しです。できるだけ効率的に進められるように、ある程度結果を予測しながら評価の方法を考えるよう心掛けています。

今後に向けて。

石川 研究開発している素材は、日常のあらゆる製品に使われているので、自分のやっていることが社会に役立っている実感がありますし、面白いところです。学生時代は化学系を専攻していて基礎知識はありますが、例えば力学的な物性の評価をする際には数学や物理など化学以外の知識も必要になるので、他分野のことも勉強したいです。

黒森 業務を通して新しい知識、技術が得られ、発見を体験できる職場にいることは、とても恵まれていると思います。この環境を活かして、課題に対しても様々なアプローチを提案できるような研究者に成長していきたいです。研究者は深い専門領域を追求してしまいがちだと思いますが、それだけでなく、先生や上司、先輩、同僚と様々な討議をして、幅広い視野を持った研究者になりたいと考えています。そして、相手を説得できる力も身に付けたいと思います。

◆キーワード


ケイパビリティ

企業がもつ組織全体の知識や技術、能力のこと。新しい製品や技術を開発する「研究開発力」や「独自の技術力」、「マーケティング力」などがある。特定の技術ではなく、開発、製造、市場調査、営業というバリューチェーン全体の能力を指し、他社が同じ製品を真似しても企業風土や事業プロセスが同じにはならない。自社のケイパビリティを見つけるためには、強みや弱みの分析、人材育成も欠かせない。

セトラスホールディングス株式会社

住所
香川県高松市磨屋町8番地1 セトラスビル1-2F
代表電話番号
087-826-6610
設立
2022年8月
社員数
150名(2025年3月現在)
事業内容
グループ経営管理、コンサルティング事業
セトラスホールディングスグループ
■協和化学工業株式会社

■マグミット製薬株式会社

■株式会社セトラスフードテック

■海外子会社

 KISUMA CHEMICALS B.V.(オランダ)

 KISUMA AMERICAS INC.(アメリカ)

 KISUMA ASIA SINGAPORE PTE. LTD.(シンガポール)

 KISUMA CHEMICAL TRADING(SHANGHAI)CO.,LTD(中国)

 KISUMA(DANDONG)ADVANCED MATERIALS TECH.CO.,LTD(中国)
地図
URL
https://setolas.com
確認日
2025.09.18

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