
「RtFみずいろクリップ」の模型を手に
ある時、商店街で白杖を使っている人を見掛けた。点字ブロックがないため白杖を頼りに歩くが、看板や自転車にぶつかりそうになったり、間違ってお店に入りそうになったり、遠くから見ても危なっかしい。
ちょうどその夜、視覚障害者が駅のホームから転落して亡くなるというニュースを見た。「いろんな技術が発達しているのに、どうして視覚障害がある人にとって、便利な世の中にならないんだろう」

RtFグラスのイメージ図。近視・遠視用メガネと
変わらないサイズに近づける。
「RtF」はRaise the Flag.の頭文字
特殊カメラで障害物と段差を検知し、振動と音で知らせる視覚障害者用メガネ「RtFグラス」は、2020年の完成を目指している。「一人で自由に街中を歩くって、視覚障害のある人にとっては夢なんですよね。RtFグラスは何としてでも完成させたい」
中村さんは、目の難病である網膜色素変性症の患者と研究者、支援者で構成される日本網膜色素変性症協会(JRPS)に参加。開発にあたっては会員の意見を参考にするほか、製品の試作機を使ってもらうこともある。
会員との交流で、視覚障害者に対して、誤った思い込みをしていると気づいた。「目が見えないと聴覚や嗅覚、触覚などが鋭敏になると思いがちですが、そういう感覚が僕と変わらないような人もいる。大人になってから病気で弱視や盲目になる人も多く、盲学校に通っていないと点字を覚えるのは大変なんだそうです」

RtFみずいろクリップのイメージ図。
食器によく使われるポリプロピレン
という素材を使用。完全防水で丸洗い
できる。2,760円(本体価格)
視覚障害者は、飲み物をグラスに注いだり、カップ麺にお湯を入れたりする時、どこまで入ったかを指で触って確認する。やけどしてしまうこともあるが、そうしないと分からないため、多くの人が諦めていた。
また、服を着る時、手触りで素材が分かっても色までは分からない。家を出た後に人からコーディネートがちぐはぐだと指摘され、おしゃれに気を遣う人は落ち込んでしまうことも。
クリップで容器の縁を挟んで、先端の位置を、飲み物やお湯を入れたい高さに合わせる。先端に液体が触れると音が鳴る。タイマー機能もあり、6分まで1分毎に経過時間が分かる。
液体センサーの反対側の部分が、16色まで色を識別。服などに押し当てると「赤」「黒」「青」など音声で物の色を知らせる。
今月からは東京にも拠点を置き、クリップの発売開始に向けて準備を進める。
鎌田 佳子
中村 猛さん | なかむら たけし
- 1972年 高松市生まれ
営業・販売職などを経て
2017年 株式会社Raise the Flag. 設立
株式会社Raise the Flag.
- 住所
- 香川県高松市中野町2-7
- 代表電話番号
- 087-887-5373
- ※1月より高松市紺屋町10-7三光館ビル1階に移転
- 地図
- 確認日
- 2018.12.20
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