視覚障害者に役立つ開発を

株式会社Raise the Flag. 代表取締役 中村 猛さん

Interview

2018.12.20

「RtFみずいろクリップ」の模型を手に

「RtFみずいろクリップ」の模型を手に

中村猛さん(46)は人の役に立つ製品やサービスを提供したいと、2017年に株式会社Raise the Flag.を設立した。イノシシやシカなどを捕獲する罠の監視システムづくりに携わっていたが、三つの体験をきっかけに視覚障害者のための製品開発を始めた。

ある時、商店街で白杖を使っている人を見掛けた。点字ブロックがないため白杖を頼りに歩くが、看板や自転車にぶつかりそうになったり、間違ってお店に入りそうになったり、遠くから見ても危なっかしい。

ちょうどその夜、視覚障害者が駅のホームから転落して亡くなるというニュースを見た。「いろんな技術が発達しているのに、どうして視覚障害がある人にとって、便利な世の中にならないんだろう」
RtFグラスのイメージ図。近視・遠視用メガネと 変わらないサイズに近づける。 「RtF」はRaise the Flag.の頭文字

RtFグラスのイメージ図。近視・遠視用メガネと
変わらないサイズに近づける。
「RtF」はRaise the Flag.の頭文字

翌日には、全盲の少女が出演するテレビ番組を偶然目にした。「目が見えないことは不便だけれど、不幸ではない」。少女の言葉が頭から離れなかった。「これに取り組まないでどうする」と奮起し、開発に取り掛かった。

特殊カメラで障害物と段差を検知し、振動と音で知らせる視覚障害者用メガネ「RtFグラス」は、2020年の完成を目指している。「一人で自由に街中を歩くって、視覚障害のある人にとっては夢なんですよね。RtFグラスは何としてでも完成させたい」

中村さんは、目の難病である網膜色素変性症の患者と研究者、支援者で構成される日本網膜色素変性症協会(JRPS)に参加。開発にあたっては会員の意見を参考にするほか、製品の試作機を使ってもらうこともある。

会員との交流で、視覚障害者に対して、誤った思い込みをしていると気づいた。「目が見えないと聴覚や嗅覚、触覚などが鋭敏になると思いがちですが、そういう感覚が僕と変わらないような人もいる。大人になってから病気で弱視や盲目になる人も多く、盲学校に通っていないと点字を覚えるのは大変なんだそうです」
RtFみずいろクリップのイメージ図。 食器によく使われるポリプロピレン という素材を使用。完全防水で丸洗い できる。2,760円(本体価格)

RtFみずいろクリップのイメージ図。
食器によく使われるポリプロピレン
という素材を使用。完全防水で丸洗い
できる。2,760円(本体価格)

生活で困っていることがないか話を聞く中で、開発のヒントを得たのが「RtFみずいろクリップ」だ。水の量と物の色が分かるため「みずいろ」と名付けた。

視覚障害者は、飲み物をグラスに注いだり、カップ麺にお湯を入れたりする時、どこまで入ったかを指で触って確認する。やけどしてしまうこともあるが、そうしないと分からないため、多くの人が諦めていた。

また、服を着る時、手触りで素材が分かっても色までは分からない。家を出た後に人からコーディネートがちぐはぐだと指摘され、おしゃれに気を遣う人は落ち込んでしまうことも。

クリップで容器の縁を挟んで、先端の位置を、飲み物やお湯を入れたい高さに合わせる。先端に液体が触れると音が鳴る。タイマー機能もあり、6分まで1分毎に経過時間が分かる。

液体センサーの反対側の部分が、16色まで色を識別。服などに押し当てると「赤」「黒」「青」など音声で物の色を知らせる。

今月からは東京にも拠点を置き、クリップの発売開始に向けて準備を進める。

鎌田 佳子

中村 猛さん | なかむら たけし

1972年 高松市生まれ
    営業・販売職などを経て
2017年 株式会社Raise the Flag. 設立

株式会社Raise the Flag.

住所
香川県高松市中野町2-7
代表電話番号
087-887-5373
※1月より高松市紺屋町10-7三光館ビル1階に移転
地図
確認日
2018.12.20

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