肌感覚の情報発信を

日本気象協会 四国支店長 西林 一茂さん

Interview

2017.08.03

子どもの頃から空を見上げるのが好きだった。小学校の夏休みの自由研究は天気をテーマに選び、気温や降水量を測った。「天気は途切れずに刻々と変わっていく。それが面白かったのかもしれませんね」

野球少年から気象予報士へ

野球にも夢中になった。「攻撃よりも守備。難しいボールをさばいた時、相手がセーフになるような場面でアウトにできた時の達成感が何とも言えません」

小学生から野球を始めて、進学した山口県立徳山高校でも野球部に入った。3年生の時、チームは県大会で優勝し、甲子園出場を果たした。「ベンチ入りできずにアルプススタンドで応援しました。うれしいけど悔しい。今思えば、初めての挫折でした。日々の積み重ねが大事なんだと痛感しました」

岡山大学卒業後、広島大学の大学院で気象について学んだ。気象データに基づいて、中国地方の雪の降り方を研究した。大学院在学中に第1回の気象予報士試験を受験し合格。1995年、日本気象協会に入った。

日本気象協会は、1950年に設立した民間気象会社のパイオニア。気象観測とデータ解析を行い、天気予報だけでなく、防災や環境に関する情報を発信している。天気予報専門サイト「tenki.jp」も運営。四国支店ではダムや道路、港湾荷役、海上工事の管理者などに情報を提供。西林さんは四国支店に赴任して20年以上になる。

「かつては雨が降るか降らないかが、気象予測の主流でした。現在、雨の有無だけで言えば、90%以上の確率で天気予報は的中しています。予報の精度の高まりとともに、要望の高まりも感じていますね」

太陽光発電設備の普及に伴って、日射量も重要視されるようになった。「曇りでも雲の位置によって日射量が違います。高い位置にあれば日射量は多く、低い位置にあれば少ない。同じ曇りでも質が違うんです。そこまでの情報が求められるようになりました」

九州は台風、東北は降雪など地方によっても協会が求められる情報は違う。四国では台風や大雨、風の情報が重宝される。愛媛県四国中央市一帯で春に多く発生するやまじ風は、日本三大悪風の一つ。「吹くか吹かないかはほぼ100%分かります。どれくらいの強さで吹くかは気圧配置によって変わるので、その予測精度を高めていきたい」。やまじ風の警戒情報は農作業に役立てられている。

子どもと一緒にサッカー

運転が好きで、車で四国を何周もした。朝日を見るために徳島県の日和佐に行ったり、夕日を見るために愛媛県の双海に行ったり。台風の高波を見るために高知県の桂浜に行ったことも。

最近では、息子が所属しているサッカーチームの練習や試合に出掛けることが多い。試合の時はビデオ撮影を欠かさず行う。「負けることが多いですが、その中でもきらりと光る場面がある。子どもたちの嬉しい表情を逃さないようカメラを回しています」。撮影後は映像を編集してDVDにおさめる。長男と次男の二人分で、4年間で50枚も作成し、チームメートにも配った。
息子のサッカーの試合では審判やビデオ撮影をする

息子のサッカーの試合では審判やビデオ撮影をする

役に立ってこそ意味がある

大切にしているのは肌感覚の天気予報だという。「自分で見たもの、感じたものを伝えていく。そういう温かみのある情報は相手の心に留まりやすいと思います」
家族全員で

家族全員で

自分自身にも職員にも戒めているのは、情報を教えているんだという感覚になったり、知ったかぶりをしたりしてはいけないということ。「とにかく相手の立場になって行動する。情報を役立ててもらってこそ、我々の存在意義がある。自己満足ではない情報発信をしたい。気象そのものを制御することはできないので、天気とうまく付き合っていく。そんなお手伝いができればいいですね」

鎌田 佳子

西林 一茂 | にしばやし かずしげ

略歴
1969年 山口県徳山市(現・周南市)生まれ
1988年 山口県立徳山高校 卒業
1993年 岡山大学 卒業
1995年 広島大学大学院 修了
     日本気象協会 入社
2010年 四国支店長

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