産学連携で切削工具の寿命を見える化
「予測管理・無人化」で新たな製造現場を目指す

葵機工株式会社/四国職業能力開発大学校

Interview

2023.08.03

葵機工株式会社 (左から2人目)常務取締役・山中治さん、(右から2人目)生産技術課長・山下和也さん 四国職業能力開発大学校 (左端)電子情報系 職業能力開発教授・玉井瑞又さん、(右端)機械系 職業能力開発准教授・宮武正勝さん

葵機工株式会社 (左から2人目)常務取締役・山中治さん、(右から2人目)生産技術課長・山下和也さん
四国職業能力開発大学校 (左端)電子情報系 職業能力開発教授・玉井瑞又さん、(右端)機械系 職業能力開発准教授・宮武正勝さん

企業と教育・研究機関が連携することで、製造現場の課題を解決できる、研究にビジネスの視点が加わる、研究成果を社会に還元できるなど、お互いにとってメリットがある産学連携。そんな理想的な姿を目指して、葵機工と四国職業能力開発大学校が連携したプロジェクトが動き始めています。

プロジェクトのきっかけとなった現場の課題は何ですか。

山中 精密部品などの加工に使う「切削工具」(刃物)は、摩耗すると取り替えます。今までその交換の判断は、熟練の技術者の知見に頼る部分が大きかった。製品への影響を考え、技術者が限界と判断する時期より早めに取り替えていますが、本当にそれが正しいのか、新しい素材の刃物に対しても同じ対応でいいのか……。この“本当に正しい交換時期”をデータで裏付けして見える化できないか、というのが始まりでした。
玉井 予測管理、IoTなど、これからの製造現場の新たな課題解決につながる内容でしたし、大学校にある機械、電気、電子情報の3つの学科がチームで取り組めるいいテーマをいただきました。ただ、おもしろいけれど難しい(笑)。

どういう点が難しいのですか。

宮武 料理をしていて包丁の切れ味が悪くなったと感じることはあっても、その“瞬間”は特定できないですよね。それと同じで、刃物が摩耗したといえるのはこの瞬間のこの状態である、という基準を明確にすることが難しいんです。

山下 摩耗=寿命、ということではなく「製品に影響が出る」状態が寿命と考えます。それを判断するためには、単に刃物の形の変化だけではなく、刃物を取り付けた設備にかかる力、振動、音、温度……様々な要素を見る必要があります。10項目ほどの要素を決めてデータ測定し、どの項目がどう変化したら寿命のサインになるのかを解明したいと思っています。

玉井 経験的に判断していたことを数値化するため、現在は各項目を測定する装置を設計・製作している段階。装置が完成したら実験してデータ処理・分析を行います。

プロジェクトのメリットは?

山下 目に見えるところでは、まず製品に影響しないギリギリまで刃物の寿命を延ばせるためコストダウンにつながる。刃物を頻繁に取り替えなくて済むと作業効率も上がります。

宮武 これからの製造現場は、一つの分野だけではなく、機械加工の際に電気やITの知識も求められる。そんな中で、機械、電気、電子情報がチームになる意味は大きい。自分たちの分野での常識が、他分野の仲間には説明しないと伝わらない。そうすると学び直しになるし、他分野へと興味が広がると思います。

玉井 お互いの役割を理解するチームワークやコミュニケーション力も育っています。卒業前に、社会や製造の現場を知る。企業の方と話をするだけでも学生にとっては貴重な経験です。
山中 そういった学生さんたちが刺激となって、社員のモチベーションアップや、ものづくりのおもしろさを実感するきっかけになれば、という期待もあります。

今後、どのような展開を目指しますか。

玉井 まずは結果を出すこと。もっと技術者と学生がコミュニケーションする機会を増やして、現場の経験や視点を実験に生かしたい。

山下 実験して結果を出してくれたものに対して、私たちはそれを現場に活かしていかなければならない。実験と現場では装置も条件も違う中で、その差をいかに埋めて実用化までもっていくかは今後の課題です。

山中 葵機工では、夜間の無人稼働をすでに進めています。人手不足、原材料高騰の中でどれだけ効率よく品質のいい製品を作れるかは大きなテーマ。実験の成果を実用化できれば、土日も無人稼働できると考えています。働き方改革にもつながりますし、単純作業を機械が担うことで社員にはもっと創造的な業務の時間が増える。プロジェクトへの期待は大きいですね。

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構香川支部 四国職業能力開発大学校(四国ポリテクカレッジ)

所在地
丸亀市郡家町3202
TEL:0877-24-6290/FAX:0877-24-6291
専門課程(2年)
生産技術科
電子情報技術科
電気エネルギー制御科
住居環境科
応用課程(2年)
生産機械システム技術科
生産電子情報システム技術科
生産電気システム技術科
地図
確認日
2018.01.04

葵機工株式会社

住所
香川県高松市朝日町3丁目7番5号
代表電話番号
087-822-5025
設立
1972年3月
事業内容
・インフレーター、ガスジェネレーター部品
・ガス、油圧バルブ 他
・頭脳モーター部品
・半導体装置部品
・SUS、コバール、ベリリウム、バイタリウム 等、難削材の切削
・設計、加工、組立
地図
URL
https://www.aoikikou.co.jp
確認日
2023.09.21

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