
田植定規を使った田植風景
香川県の農業の特徴、それは狭い耕地面積と高い人口密度、そして年間を通じて温暖でありながらも、夏場には日照りという自然条件と戦わなければならないことにあります。現在でも、香川県の農業は「資本労力集約型農業」ともいわれ、狭い土地に投資し、労力をかけることで収益性の高い農業を営んでいます。ハウス栽培などの施設園芸の普及や、アスパラガス、イチゴなどの軽量ながらも単価の高い作物の栽培が盛んな土地柄でもあります。
稲作についても、狭い面積を効率よく活用し、より多くの収穫を得るために様々な工夫がなされました。現在では機械化されている稲作ですが、機械化が始まる昭和中期までは稲作の先進県として名をはせていました。例えば、大正時代から戦前にかけて香川県の稲作の反収(単位面積当たりの収量)は全国5位以内に位置しておりました。また、1949年(昭和24年)から行われた「米作日本一競作会」では香川県の生産者が一位に名を連ねています。
香川県の稲作の進展を支えたのが、1906年(明治39年)に木田郡池戸村(現三木町)の串田太市氏が発明した「串田式正篠田植器」の普及です。現在でも「田植え定規」として親しまれる農具で、少ない労力で縦横整然とした田植えが可能となりました。発明後、県内で爆発的なヒットを生み、県の政策もあいまって、1908年(明治41年)には県内の田植えの方法が一気に改善されたとの記録も残っています。
実は、「串田式正篠田植器」は現在でも県内の小学校での田植え体験で使われており、100年の時代を超えた現在でも生きた農具として現役で活躍しています。
「一合蒔いた 籾の種 その枡 有り高は 一石一斗一升一合と一勺」。盆踊り唄「一合まいた」には1粒の籾種が「千倍(正確には1111.1倍)になってほしい」という先人の切実な願いが込められています。これから盆踊りのシーズンに差し掛かり、先人の稲作にかけた想いが現代によみがえり県内に響き渡ります。
三豊ナス

写真提供:高松市観光交流課
ナス素麺

写真提供:高松市観光交流課
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